「人との繋がり」を重視する。鳶の友誠が会社拡大に向けた活動をスタート
更新日:2025/4/29
昨年、鳶の友誠(静岡県袋井市)の青木友香社長が、国家資格である「1級とび技能士」を取得した。静岡県内で女性の1級とび技能士が誕生したのは初めてとなり、同時に受けた社員2名も見事合格を果たした。

2・3級から対策を始めるのではなく、1級とび技能士に照準を絞った理由を青木社長に聞くと、「創業以来、多くの方に支えられここまで来たが、業務を続けるにつれて、何となく『会社としての説得力が欠けているのでは?』と感じ、社員3人での受験を決意した。社内では『挑戦するのは最初で最後。全員で1級に合格を!』と目標に掲げ、無事に達成できたことに正直ホッとしている」と本音を話す。実際に資格取得が県内に知れ渡ると、大手ゼネコンや公共工事の依頼が舞い込むようになり、会社としての選択肢は広がり続けている。


青木社長は、短大卒業後に食品会社で勤務し、29歳の時に未経験で建設業に入職した経緯を持つ。16年近く個人事業主として活動し、「社員が家族に誇れるような会社を作る」と、社会保険を完備したタイミングで「鳶の友誠」を法人化した。法人化直後から、仕事をこなす日々は送れていた。しかし、「足場工事会社が請求書を送付できるのは、材料を全て撤去した後」という慣習により、月末に従業員への給与支払いが困難になる事態が発生。親族にも相談できず八方塞がりで立ち尽くしていると、それを見越したように元請けであったMAEKOU(静岡県袋井市)の前田陽亮社長から「初月だから社員への給料の支払いが厳しい状況だよね?請求書を持って来なよ、すぐに払ってあげるから」という連絡があり、文字通り会社が救われた一幕があったという。前田社長だけでなく、土木・橋梁耐震などを手掛けるKAMIYA(静岡県袋井市)の神谷隆司社長を含め、「当社はあらゆる局面で多くの方々のサポートによって、今も生き残ることができている」と青木社長は目を潤ませる。これまでは、様々な形で恩を受け続けてきた立場だった。だからこそ、青木社長には「私も困った状況の同業者や職人が現れた時は、率先して手助けができるよう、継続的な成長ができる組織を作る」という思いが人並み以上に強い。既にキャリアアップシステムやグリーンサイトなどに着手済の現状を考えると、鳶の友誠の現在地が飛躍直前だという見立ては間違いなさそうだ。


「今後は、1級とび技能士・3人が在籍する会社という現実を前面に出して、これまで取り組めていなかった大規模な工事にも挑戦する。今年に入ってから人員増加や設備投資についてなど、会社拡大のために施策を練る時間も増えている。静岡県で唯一無二の足場事業者として確立できるよう、社内で結束し難局を乗り越えていきたい」と意気込みを語った。青木社長には、「徐々にでも、一緒に1級とび技能士に合格した2名の社員に、会社の舵取り役を任せていきたい」という秘めた考えがあるようだ。今後、青木社長がどのような形で、組織体制を強化していくか注目である。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。