本社移転のトオヤリペアテックが、「求められる人材」を追求へ
更新日:2025/4/28

2024年12月10日に、トオヤリペアテック(浜松市中央区)が本社を移転した。それまで民家・田畑となっていた土地をいち早く見つけ、買い上げる形で新社屋を創設。幹線沿いに会社が隣接する特徴を活かし、地域には今まで以上に会社の存在を浸透させている。遠矢直久社長は、「社員に快適な職場を提供すると同時に、今回の移転を採用強化に繋げたいとの思いがあった」と本音を語る。2025年から新しい社屋と豊橋支店の2拠点で始動しており、これまでにない事業を展開する方針である。


遠矢社長は、新卒で県内の地場ゼネコンで修行後、同社に入社した経歴を持つ。中学生の頃から、「いずれは父が創業した会社を引き継ぐ」と覚悟を決めていた。修行中は、様々な無理のしわ寄せが現場に集約し、それを制約下でも克服した貴重な体験もできた。幾度となく理不尽な思いもしたが、「この経験を還元してみせる」との揺るぎない志を抱き、2007年に満を持して家業に転身。翌年にはリーマンショックが発生するなど、世界的な恐慌で苦しい時期も続いたが、「両親が堅実な経営を続けていたからこそ、ダメージを受けながらも乗り切ることができた」と振り返る。現場や営業、経営統括などを経て、2014年には代表取締役に就任。社長に就いてからは、優良な協力会社との出会いに恵まれたことで、「造る時代から直す時代に」を掲げ、補修・補強に特化した会社づくりに着手した。近年では、これまで土木や補修などに偏る傾向のあった会社の売り上げ構成を、補修・土木・造園でバランスを取る経営も心掛けている。

現在も「とにかく人材の育成と確保」を重要事項に置くスタンスは変わらないが、遠矢社長は一時期まで採用面で実施していた「『来る者を拒まず』の姿勢を切り替えた」と率直に話す。理由は「多数の資格を持ち優秀な実績があっても、会社の理念に共感した上で業務に取り掛かれなければ、結果的に組織内の不協和音になる可能性が高いと理解したから」と話す。特に面接に身なりを整えず参加する、言動が一貫していないなど、その時に感じたわずかな違和感が、後に決定的な差異として表面化することも多かったようだ。このような現状を踏まえ、昨年度からはコンサルも交え、職種ごとにスキルアップできる制度を構築。評価基準なども社員が参加する形で作成し、今年度から運用を開始しており、常に改善・改良を続けている。

社長就任から10年が経過したが、遠矢社長は「ここまで来たからには、業界内の『出過ぎた杭』として更なる存在感を発揮したい」と溢れ出る思いを表す。独自の経営信条と仁義を重んじるスタイルは、異彩を放っており、混迷を生き抜く上で必要なエッセンスが含まれている。社内外の双方で「求められる人材」を追求するトオヤリペアテック。あらゆる物事に余念がないスタイルは、時代の転換期において有効策となっており、組織変革を目論む企業は参考とすべき点が多いはずだ。

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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。