「地域の守り手」としての存在感を高める 伊東建設業協同組合
更新日:2025/9/3
今年5月に開催した伊東建設業協同組合の総会にて、堀口組(静岡県伊東市)の堀口正敏社長が理事長に就任した。50年以上の歴史を持つ同組合は、若い世代がリーダーシップを発揮する土壌が脈々と受け継がれている。就任直後の挨拶で堀口理事長は、「時代の変化に柔軟に対応しながら、歴代のリーダーが培ってきた団結力を継承する。責任は重大だが、全力を尽くすので力を貸してほしい」と協力を呼び掛ける表情には静かな覚悟が滲み出ている。

人件費や原材料が高騰する中、組合員は着実に利益を確保しながら、「地域の守り手」の役割を果たしていくことが求められる。堀口理事長は、組合として伊東市内のインフラ維持に注力する考えを示しており、「近隣の自治体では道路包括管理業務を委託している。我々の団体では何ができるのかを検討し、地域を下支えするために組合の改革も視野に入れている」と見立てを話す。単に受注を増やすだけではなく、全組合員に利益を分配し、継続的な地域貢献が可能な体制を望む。想定する施策は中長期に及ぶ見通しであり、「組合員が同じ方向を向いて進めるよう、発注機関との勉強会や意見交換を続けていく」と並々ならぬ意欲を示している。

組合では昨年、初めて独自で伊東警察署や駿東伊豆消防本部と合同で防災訓練を実施した。堀口理事長は、「災害対応に備えた関係機関との連携は重要なテーマ。地道な積み重ねこそが、予測不能な災害発生時に地域を守る大きな力になる」と基本姿勢を述べる。訓練では、土砂の中に人形を埋めて救出するなど実践的な内容も取り入れており、参加機関からも「今まで以上にリアルな現場が体験できた」と好評の声が上がっているという。日頃から「顔の見える関係性」を築くことで、万が一の事態の助けになる。組合の試みはシンプルだが極めてオーソドックスな手法で、今後も日を追うごとに連携が強化されることに期待が持てる。

業界共通の課題である担い手の確保に対して、堀口理事長は「建設業そのものの価値向上が必須だ」と断言する。「災害時の一次対応を担う建設業が地域に存在すること自体が、住む人々にとって最大の安心材料になるはず。この大きな価値を多くの人に知って頂きたい」と広報の重要性にも目を向ける。静岡県と伊東市が主催する奥野ダム教室には、PR活動の取り組みの1つとして10年以上も協力・出展しており、日々の蓄積による関係性の拡張も体現する。課題は山積みだが、「地域社会に貢献する力強い地場産業」として発展する意欲は全組合員に漲っている。今後も堀口理事長は、「地域貢献の継続が未来の建設業を担う人材の輩出に繋がる」と信じ、組合活動に最善を尽くしていく。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。