門屋組が「200年企業」に向けた基盤強化をスタート
更新日:2025/12/4
門屋組(愛媛県松山市)が今年1月、創業115周年の節目を迎えた。これまでは民間工事を主軸に、住宅から商業施設まで幅広く新築を手掛けてきたが、門屋光彦社長の就任以降は、マンション建設への参入やメンテナンス事業などを強化し業績を拡大。最近では、国の重要文化財である道後温泉本館保存修理工事を担い、温泉の営業を止めず施工を続けるという全国初の取り組みを完遂するなど卓越した技術を発揮している。


門屋社長は、新卒で高知県の建設会社に勤めた後、同社に参画した経緯を持つ。「後を継ぐことは小学生の頃からの目標だった」と心に誓っていた通り、31歳での社長就任を実現した。長年の夢は叶えることができた。しかし、半世紀もの間、社長を務めた父・齊氏の背中は想像以上に遠く、「簡単に引き継げるものではない。まずは広告塔として役割を果たすべき」と冷静に状況を見極める決断をした。門屋社長が真っ先に取り組んだのは、社章である「マル留」の浸透。「社名は知られていてもマル留の認知度はゼロに近い。100年続く企業が、この状態を続けているのは問題なのでは?」と危機感を持ち、大胆な地域協賛を展開した。学生主催のイベントにも出資を惜しまず、大学生がSNSを中心に積極的に発信したことで、若年層への認知度も飛躍的に高まったという。「『やりすぎだ』との批判も存在したが、根気強く広報を続けた結果、今ではマル留を知らない人はいなくなった」と誇らしげに語る表情が印象的である。


景気に左右されやすい新築工事主体のビジネスモデルも抜本的に見直した。社長就任後に策定した「地図に、歴史に、人の心に留まる建物を見守り続ける」という理念に基づき、間もなくメンテナンス事業部を確立。「建物は建てて終わりではなく、『ホームドクター』となり、不具合があればすぐに対応できる体制が必要だ。小規模な改修やアフターフォローに、我々は喜んで対応する」と、建設後も責任を全うする体制を確立した。この理念は、一昨年竣工した新社屋にも表れており、そこでは通常なら収益を生むはずの1階を、あえて地域住民向けの大会議室として無償で開放。地域の催しや災害時の避難場所としても活用できるよう対応している。「全ては地域に必要とされる存在であり続けるためのこと。地域貢献は最終的に会社自体の持続性に繋がる」と門屋社長は胸を張る。

自身が目指す200年企業として成り立つために、必要不可欠な要素を門屋社長は「地域力の強化」と捉えており、今なお地域行事や地元のプロスポーツチームにも投資を行う。「自社の利益のみを追求する企業が増えれば、間違いなくその地域は衰退の一途を辿る。利益だけでなく街全体の振興が地域住民との絆を生み、企業に対する信頼も醸成する。これが目標とする200年企業に向けた基盤になるはずだ」という信念は固い。「愛媛の未来、そして建設業界の未来を切り開きたい」。常に前進を続ける目線は、既にその先の希望を見据えている。

てるひこブログ:https://www.kadoyagumi.com/blog/
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。








