クラフトバンク総研

新たなアプローチによる人材確保に挑戦 加々美

更新日:2025/7/31

加々美(静岡県富士市)が、リクルートの提供する「サンカク」の活用を開始した。同システムは、全国各地の企業が求める副業案件をウェブ上に掲載し、それに対応可能な人・会社をマッチングする独自のサービス。銀行からの紹介で利用を決め、InstagramやTikTokなどのSNS運用の他、求人を募集する際の文面作成に長けた人物を探していく方針だという。

今回の取り組みについて、加々美勝昭社長は「慢性的な人手不足が叫ばれる中、当社としても何か打開策を打つ必要があると導入を決めた。まだ始めたばかりのため、明確な結果が出た訳ではないが、何らかの形を残せるよう継続したい」と意向を述べる。会社が真っ先に解決すべき課題は「人材確保」。「これまでにないアプローチは何か?」を突き詰めて考えた答えであり、今後の新たな打開策に繋げていけるか注目である。

加々美社長は、10代の頃から建築・土木を中心とした鉄筋工事の現場で経験を積み、2002年に法人化を実現した。会社が軌道に乗る設立5年目前後までは、工場創設のために銀行から借金をしたり、大手ゼネコンからはあまり相手にされなかったりと、なかなか思うような事業展開ができない状況があった。その後、何となくだが、全体を見ながらバランスの取れた経営に手応えを感じ始めた2008年。突如リーマンショックが発生し、赤字覚悟でも公共工事に手掛けざるを得ない状態に陥る形となった。頭の中では何度も「もう限界かもしれない」という言葉が頭をよぎった。しかし、辛抱強く利益率にも着目した組織運営を続けた甲斐もあり、「東京オリンピック需要に辿り着くまで、何とか耐え凌ぐことができた」と当時の状況を振り返る。現在は静岡県だけでなく、中部全域や関東・関西・東北など多数の施工実績を積み重ねており、安全を最優先にした信頼と実績を全国に築いている。

 

建設業界全体が抱える問題点を加々美社長に聞くと、「公的には賃上げを求める一方、裏では専門工事業者を叩き合う構造が依然と残っている点。また、人手を集めるために借金を強いるなど、様々な部分で矛盾点が散財する点」と即答する。建設業は、後世にまで作品を残せる魅力的な職種。しかし、前例踏襲の継続のみでは行き詰まりを見せるのは明白だ。加々美社長は、「当社1社のみで解決できる問題ではないが、まずは所属する静岡県鉄筋業協同組合とも連携することで、少しでも改善・改良への道筋を付けたい」と前だけを見つめる。一丁目一番地は、「建設業は人々の生命・財産を守り抜く素晴らしい仕事」と周知し、若手が入職できるための間口を広げること。社員には20~30代が多く、会社内は活気で溢れている。「限界を定めず常に向上心を持って最後までやり遂げること」を経営方針とする加々美が、次にどのような展開を見せるか刮目すべきである。

関連記事:建魂一適 『静岡県鉄筋業協同組合』

静岡県鉄筋業協同組合:https://shizuoka-tekkin.com/

新着記事

  • 2025.12.02

    伊田テクノカレッジを基軸に、盤石な体制の構築を志向

    「建設業を何も理解できていない状態で入社したんだ」 埼玉県に本社を置く伊田テクノス(埼玉県東松山市)の楢﨑亘社長が、少し照れながら打ち明ける。大学時代まで剣道に打ち込む毎日を送っていた。「全日本実業団大会で優勝を目指そう […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.11.28

    宮村鉄筋工業が「ものづくりは人づくり」を追求へ

    昨年4月、宮村鉄筋工業(福岡県大牟田市)の代表取締役社長に宮村良太氏が就任した。5年間の正栄工業(大阪府枚方市)での修行後に参画した家業。創業者かつ父でもある宮村博良会長の経営理念である「職人ファースト」を踏襲する形で就 […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.11.27

    渡辺建設が「建設業一筋」で未来を築く

    「会社にとってプラスになる仕事は積極的に引き受けている」 渡辺建設(静岡県裾野市)の渡辺正高社長が、2020年に代表に就任して以来、重要視してきた信念である。昨年11月には、常磐大学で一日講師を担当し、企業経営をテーマに […]
    クラフトバンク総研記者松本雄一
  • 2025.11.26

    東海信和が「人」への投資を重視した戦略を継続

    足場工事を手掛ける東海信和(愛知県名古屋市)は、くさび緊結式足場の可能性を追求している。2026年のアジア競技大会のメイン会場となる瑞穂公園陸上競技場(パロマ瑞穂スタジアム)のリニューアル工事では、これまでの競技場建設で […]
    クラフトバンク総研記者松本雄一