PR強化で「長崎流」を発信 長崎県解体工事業協会
更新日:2025/5/2
長崎県解体工事業協会は、県内における解体工事の中心的な役割を担い、施工技術の研鑽や建設資材廃棄物の再資源化を推進している。会長理事を務める池田正喜氏は、「長崎の美しい土地を後世に継承していくため、会員各社が結束し発展することで、地域振興に繋げていく」と固い決意を語る。協会では、会員の拡充・組織の強化を図る中、全国解体工事業団体連合会とも連携し、解体施工技士などの資格取得や啓発事業も手掛けるなど、積極的な活動を続けている。

解体工事業の市況について池田代表理事は、「公共施設の建て替え時期を迎えていることに加え、行政による危険な空き家の解体補助、民間発注者による案件も増えており活況だ」との見解を示す。その一方で、新規業者の参入が相次ぐ状況に「受注競争が激しさを増している。私達会員も一致団結・切磋琢磨することが必要な時代に変わった」とも分析する。この好況を追い風に、最近では協会に加盟している約40社各々が、全国解体工事業団体連合会と連携し開かれる研修や講習に積極的な参加を開始。大規模で複雑な構造物の解体に必要な技術の高度化や、建設リサイクル法の遵守、廃棄物・有害物の適正処理など、細部に求められる徹底的な監理に対応できるよう底上げを実施している。万全な下準備を心掛けているように見えるが、会長理事は「大局的な視点に立つと、解体工事だけの実施では経営難に襲われるのは間違いない。近々にも全ての会員企業が地元に根ざした建設業として、新たな生き残り策を模索する必要がある」と言及する。自身が代表を務めるエムアイ興産(長崎県佐世保市)にて、次なる一手として掲げるのは空き家改修事業やタクシー会社、レンタカー事業など多角化経営。「これらは、いずれも地元の方からの要望で立ち上げたプロジェクト。特に従来は解体していた空き家を喫茶店などの憩いの場、民泊施設などに改修するのと反響が大きく、想像以上に喜んで頂けることも当社の活力になっている」と真髄を話す。解体するだけでなく、地元の声に耳を傾け、地域の魅力を再発見し生かす取り組みは、既に花開きつつあるようで、これまでにない突破口となりそうだ。


これから協会として重点を置く事業に、代表理事は「広報」と即答する。九州地方内で解体青年部が立ち上がっている気運を踏まえ、直近にでも青年部の設立や公式SNSの開設なども画策する。「現代の組織運営においての重要事項は、インターネットを使った情報発信。県内に多くの現場がある機会を活かし、今こそPRを始める時だ」と宣言する。確かに長崎県には、五島列島や壱岐、対馬などで知られる島々が70以上もある。県面積の45%を占めている風光明媚な長崎県を、協会・支部の活動によって強みに変えていける可能性は高そうだ。変革への歩みを始めた長崎県解体工事業協会。地域と共に協調して挑戦を続ける協会が、「長崎流」として現状を打破することに期待したい。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。