KAMIYAが「仁義」を尽くした連携で、元請け事業を強化
更新日:2025/5/2
KAMIYA(静岡県袋井市)が、今年8月に創立30周年を迎えた。はつり工事から始めた取り扱い工種は、時代の変化に応じて徐々に広がりを見せ、現在は橋梁やトンネルの耐震・補修・補強工事などを中心に事業を展開している。6月には清水市に静岡営業所を開設し、橋と道路を守るプロフェッショナル集団として静岡県内の安全・安心を下支えする。

元請けとしても事業展開する社長の神谷隆司氏は「下請け企業を増やし育てることも当社の重要な仕事」と認識する。実際に宇野工業(浜松市)や鳶の友誠(袋井市)など、創業前に相談に乗った際、「必ず上手くいくから、全力で協力する」と強力に背中を押したケースが複数ある。これまで多くの企業と良好な関係を築いてきた証として、2021年には長く足場施工を発注していた協力会社と共同で、新会社「セーフティファースト」を設立。自社でも足場施工に携わることで、人員配置・コスト面での生産性向上を実現した。

神谷社長が仕事を進める上で何より重視することが「仁義を尽くすこと」。「元請け・下請け関係なく、関わった全ての人にとって有意義な技術・情報を提供し続ければ、与えられた側は当社を心に留めておく。その蓄積こそが次の仕事に繋がっていく」という確固たる信念を社内にも浸透させる。起業直前、社長自身の貯金を担保にした出資依頼を、ある銀行が拒絶した直後、真っ先に同じ条件で応じた信用金庫との関係性は現在も続き、その後は競合に当たるどの金融機関とも取引を行っていないエピソードは有名である。筆者がなぜこのような形で義理・人情を貫けるのか尋ねると、「『まさかの時の友こそ真の友』。自分が窮地の時に助けてくれた方への誠意は、相当の不義理を受けない限りは覆せない」と即答。出資を断った銀行との付き合いに関しては、その後どんなアプローチをかけられても、現在に至るまで成立していないのは言うまでもない。協力会社に対しても、自社の儲け度外視で積極的に仕事を回し続ける要因は、長年通してきた同じスタンスから来ているようだ。


業界全体の課題である人手不足の解決に取り組む中、神谷社長は磐田東中学校・高等学校の理事も務めている。「今の労務単価で建設業に入職を希望する若者がいるだろうか?」「突然の天変地異が頻発すれば、どのような形で国土を保つのか?」という疑問を抱きつつも、高校生との面談を通じて、若者特有の傾向や姿勢を考察。漠然とだが「資格取得のハードルを少し下げ、更新試験を強化するなど、何らかの変革を実施しない限り、業界の明るい状況は見通せない」という結論に辿り着きつつあるという。既に社内の定年制も撤廃し、体力的な限界を迎える直前まで働いた後は、その経験を後輩に伝承できる仕組み化も進めている。

「直近では、元請けの仕事を着実に増やせるような活動に従事していく。近い将来は、建設後50年以上も経過した橋が5割以上になる見込みだ。これら全てのインフラを無事故で維持し続けるには、長年培ってきた経験・技術の集結が不可欠。建設業が盛り上がりを見せれば、その余波で国の経済も回復傾向に向かうはず。私の使命は『若者の入職者を建設業界に増やすこと』と覚悟を決め、日々の業務に邁進していきたい」。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。