金子工業が売り上げ100億円を見据えた事業展開へ
更新日:2025/4/25
金子工業(岐阜県下呂市)の金子健一郎社長は、社長就任以来「地方にも魅力的な企業、生活があることを実証すること」を信条に掲げている。都市部への人口流出が止まらない状況を鑑み、「社是である『住みよい環境づくりに奉仕する』の基本に立ち、地域に根ざした建設業者として、当社から振興を図っていく」と決意する。

大学では経済学を専攻。その後、新卒で入社した銀行で、多くの経営者と出会ったことが現在に繋がっており「一意専心で会社存続のため身を粉にする姿を目の当たりにし、経営者として家業に貢献したいという思いが、常に心の片隅に存在していた」と当時を振り返る。時を同じくして父でもある前社長から声が掛かり金子工業に転身。各部署での修行を経て、2020年9月に社長に就任した。

金子社長は、自社の強みを「長年に渡って社員一人ひとりが培ってきた知識と経験」と即答する。企業文化として脈々と受け継がれてきた長所が生きるよう、技術研鑽と人材育成には余念がない。積極的にICTを駆使することで、コミュニケーションの創出に重きを置いている。特に「上下関係を敢えて明確にしないことで、風通しがよい社風を心掛けている」と特徴を語る。給与待遇や福利厚生などは、地域でもトップクラスを自負しており、年間休日は121日を確保した。社員や家族の相互理解を深めるため、2024年度からは社内報「金子魂」の発刊を開始。インタビューや社員、施工現場を紹介するページはいずれも陽気で、会社の心意気を表していることが垣間見える。実際に20代を20人、30代を10人も雇用している実績からも、フラットな社内の関係性や、時代に合った働き方の維持に努めていることが理解できる。

建築・土木に加えて、主軸となっている不動産事業では、下呂市の温泉街・中心地にある、長年未活用だった空きビルを購入・改修し、新たな魅力を生み出している。1階ではおみやげや軽食を販売、2階は射的場、3~4階は駐車場、5階は同社と近隣旅館の従業員向けの寮として利活用している。どの機能も社員・地域住民からの要望を具現化したもので、1~2階部分は人気のスポットに成長することができた。この取り組みを布石とし、今後も街づくりを進め「地方にも面白い会社がある!」と話題となる日まで2の矢・3の矢を放つ覚悟だ。金子社長は、「地域に不可欠な存在として定着するため、売り上げ100億円を目指すこと」を目標に定めている。近い将来に実現した際は、金子工業と地域は更なる変貌を遂げており、これまでにない世界観を私たちに示すはずだ。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。