和建設が「終わりなき建設業の未来」を築く
更新日:2025/12/18
和建設(高知市)の取締役である中岡竜太郎氏は、新卒で大手旅行代理店のJTBに入社し、海外支店での勤務を経験するなど順調な道を歩んでいた。日常に対する不満は一切なく、そのままキャリアを全うすることを考えていた。しかし、顧客であった和建設の中澤陽一氏から熱烈な誘いを受けたこと。また、「高知を自らの手で面白い街に変貌させてみせる」という熱い思いに強く感銘を受けたことで、間もなく入社を決意。2021年の参画後は、前職で培った地域活性化の知見と建設業を掛け合わせ、多彩な取り組みを手掛けている。



中岡取締役は、行政やスタートアップとの連携を強みに、数々のプロジェクトを軌道に乗せてきた。その代表格が2024年に開業した同社初の宿泊施設「ナミテラス芸西」。当時始まったばかりの「ふるさと納税を活用したクラウドファンディング型の資金調達制度」を活用し、棟数を当初計画から大幅な拡大を実施。その資金を基にPolyuse(東京都港区)と国内初の3Dプリンター製のサウナを整備したことで、業界内外から大きな注目を集めることができた。「現在地に辿り着けたのは、良い御縁の連鎖が続いた結果。業界の知識が少なかったが、裁量権を与えられたことに感謝している」と真っ先に周囲への気配りを見せる姿が印象的である。この動きと並行する形で、森林保全活動と高知県産木材の利用促進を図る「仁淀川町 和(かのう)の森プロジェクト」も本格化。木材加工のノウハウを持つスタートアップ・VUILD(神奈川県厚木市)と共同建設した、地産地消の町営住宅「仁淀川スタッドハウス」はグッドデザイン賞を受賞しており、現在はこのノウハウを海外にモデル展開する計画も進めているという。


目下の課題は「現場監督の不足」と明言する。人口減少が続く中、技術者の確保は容易ではなく「分譲マンション事業で培った開発から管理まで一気通貫で行ってきたノウハウを活かせないか?」と他県での展開も視野に入れた戦略を模索する。若手採用においては近年、学生のインターンを迎え入れるイベントを開催するなど、新たな試みを積極的に取り入れることで優秀な人材獲得に繋げているようだ。

中岡取締役は「事業の背景にある思いや理念を体系化し、新たに行動指針を策定したい」と先を見通す。「山が生態系で構成されているように、我々のビジネスも顧客、協力会社、地域社会、教育機関など、様々な関係性の上で成り立っている。この考え方を浸透させた組織を作り上げる」と並々ならぬ覚悟を示す。「人と人、気持ちと気持ちのしあわせづくり」を体現しようとする姿は尊く、「終わりが見えないからこそ充実感がある」と断言する表情は何とも清々しい。「和建設は、既に一歩先のステージに向かっており、地域社会の未来は明るい」。筆者は今回の取材を通して、このような希望を抱かざるを得なかった。


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この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。









