DX加速化の刈谷建設が、会社一体で地域インフラを守る
更新日:2025/5/2
刈谷建設(高知県四万十市)の佐田博社長は、ゼネコンで6年間の修行後、家業ではなく、同じ四万十市にある同社に入社した過去を持つ。もちろん家業に戻る選択は常に考えていた。しかし、同地区で切磋琢磨してきた刈谷建設に跡取りがいないと知ったこと。また、自分の力がどこまで通用するか試したいという思いが高まり、「家業とライバル関係になる葛藤を乗り越え決断した」と当時を振り返る。

コロナ禍では、急速に進んだデジタル化の波に乗るため、ICT施工などのDX導入を積極的に推進。当初は、特に年長の技術者からは「これまで上手くいっていた手法を変える必要はない!」と強い抵抗を受けたが、「新技術の導入は、公共工事入札の加点対象になる」や「人手不足や残業規制に対応するには、今からでも遅過ぎるくらいのタイミング」など、地道な説得を続けたことで、何とか着手まで辿り着けたようだ。開始直後から、覚えの早い若手社員を中心に社員間での相互学習が進み、徐々に現場全体に新たな技術は浸透。「思いのほか反対意見も多く、正直DX化に躊躇した局面もあったが、今では過去には戻れない状況になるほど、現場の生産性は向上している」と自信を見せている。

現在掲げる目標は「現状維持を徹底した上で、地域を守り抜くこと」。高知県は、南海トラフ地震発生時に甚大な被害を受ける可能性が高いと長年言われ続けている。このリスクを受け入れた上で地域を守るためには、「地元の建設業者が1社でも多く生き残り、横の繋がりを強めることが何よりも重要」と強調する。それを実現していくには、「会社の状況を少なくともキープし続ける必要がある」と地に足が付けた判断をする。中村地区建設協同組合では、副理事長として商工会に前向きな提案を実施するなど、地区内の連携強化を進めている。

これまで刈谷建設では人手不足を補うため、様々な手段を試してきたが、佐田社長は「リファラル採用に勝る手法はないと感じ始めている」と経験を語る。既存社員からの紹介で入社した社員は、社交性に富んだ上に忍耐強く、実際に定着率も高い。刈谷建設では現在、30~50代の社員がバランス良く配置された体制となっており、責任感を持った社員が相互に協力し合える関係が構築できているようだ。
「『地域のインフラを守る技術を、次世代に引き継でいく』というテーマは、この先も決して変わることはない。甚大な災害が頻発する状況が続くが、生まれ育った深い愛着のある四万十市を守るため、会社一体となった挑戦を今後も続けていきたい」。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。