業界改善の可能性に賭ける 日本型枠工事業協会・青森支部
更新日:2025/9/20
日本型枠工事業協会・青森支部の髙木浩二支部長(山本建設・代表取締役)は、2019年に前任者の指名を受けて支部長に就任した。それまで協会の会議に出席した経験すらなく、「まさに寝耳に水だった」と当時を振り返る。ただ、任された以上は責任を果たすべきと覚悟を決め、前会長である山本氏の助言に支えられながら、「職責を一歩ずつ積み重ねられたことで、現在地まで辿り着けた」と語る視線が特徴的である。

髙木支部長は、PCオペレーターとして社会人生活をスタートした後、周囲の勧めもあり1994年に山本建設に入社した。業界未経験だったが、現場での厳しい修練にも耐え続けたことで、着実に技術を習得。28年にわたり型枠工事の第一線で活躍し、職人から叩き上げで社長に就任した異色の経歴を持つ。青森支部では、県との対話や提言活動などを実施。5年ほど前に青森県建設産業団体連合会の一員として取り組んだ公共工事の最低制限価格の見直しでは、従来の予定価格80%から90%への引き上げを実現させた。「専門工事業者の待遇改善が進み、持続可能な地域建設の基盤づくりにも繋がった。地域に根ざす業者として大きな意味のある成果だった」と確かな手応えを基に団体運営を続けている。

業界全体の課題を「人材確保」と即答した上で、「人が入りたくなる職業と印象付けることが最も重要なこと」と語気を強める。単価の是正が処遇改善の要であり、それが人材流入・働き方改革の推進に繋がると分析。今秋には全国標準単価の見直しが予定されており、「都市部だけでなく、地方の実情にも配慮された基準となるかが試金石になる」と冷静な見通しを述べる。
日本の建設業は、耐震性能や施工精度など世界に誇れる水準を持つ。しかし、型枠工事を含め専門工事業者が正当に評価されているとは言い難い現状を「正直、歯痒い気持ちが強い」と本音を話す。その言葉の奥底には、「地域建設業を『雇用を支える基幹産業』と位置付け、「国民の生命・財産を守る社会的責任を担っているから」という明確な自負がある。地方の建設業にとって、インフラ整備は安心な暮らしそのものであり、生活道路や公共施設は県民の生命線。このような前提に立った上で、「行政との協調も図りながら、安定的な発注環境と従事者の処遇向上に結び付けていきたい」と俯瞰した視野で業界全体の将来を見据える。「信頼される業界を目指し、支部としての役割を着実に果たす」。その穏やかな語り口には、揺るがぬ覚悟と柔軟な発想が両立しており、新たな可能性が現れてくるはずだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。