東海地区型枠工事協同組合が「枠」に囚われない取り組みへ
更新日:2025/5/2
東海地区型枠工事協同組合が、来年5月に設立60年を迎える。これまで同組合では、愛知・岐阜・三重のエリアを中心に、組合員の経済的な地位の確立を目指す活動や、型枠技能士・登録型枠基幹技能者などの育成を手掛けてきた。10年に渡り理事長を務める渡會武則理事長は、「人材や単価の確保など山積する課題に真正面から向き合い、型枠工事業の地位向上を実施していく」と誓いを新たにする。

組合では、渡會氏が理事長に選ばれた時の選挙から、全組合員が適任と判断した理事5人を記載し、その総数から理事長と副理事長を選出する方式に変更。就任直後から、これまで産廃業者に金銭を支払うことで処分していた型枠材を、木質バイオマス発電に使う材料として販売するなど、様々な施策を打ち出している。この取り組みを始めるに当たっての経緯には、「林野庁や地域の関係者らと膝詰めで話し合い、あらゆる懸念点を払拭して体制を整える必要があった」と渡會理事長は振り返る。事業は順調に成長しており、SDCsが求められる時流にも乗り、「今年度の取り扱いは、8000トンもの量になる見込みだ」と自信を見せている。


毎年開かれる建設専門工事業合同体験フェアを通じて、組合企業に入職した人数は5年で50人にも上る。「各社が独自で採用した数は含まれていないが、それを加味しても少ない」と現実を直視する。入職者を増やす鍵になるのは「休日を保証すること」と考えており、「個々別々で既に4週8休を達成する会社や現場もある。しかし将来的には、組合としての独自ルールを策定し、組合員だけでなく発注者にも協力を呼び掛けていく方針だ」と意欲を見せる。近年では、会員に技能五輪国際大会の日本代表選手としての参加を積極的に薦めるなど、優良な若手・担い手の育成に注力。「このような活動を地道に続け、建設業の魅力や働きやすく改善された実態を周知していきたい」と広報にも意識を向けるようだ。


渡會会長が「至上命題」と断言するのは、「単価を上げていくこと」。「実現には、まず組合が一致団結しなければ、この業界の未来を変革していくことは不可能」と警笛を鳴らす。バブル崩壊やリーマンショック、コロナウイルスの感染など、外的要因による変動に左右される状況に理解を示しながらも、「続いてきた安易な値下げに終止符を打つ」と決意する。日本型枠工事業協会が掲げる、キャリアアップシステムゴールドカード取得者・年収800万円の早期達成を目標にしている。既に具体策の画策も始めており、「組合員らの協力を得ながら、受注実態を調査する。それを基に議論を深め組合機能を活性化させたい」と見立てを語る姿も印象的だ。

「組合としては、技能労働者の更なる働き甲斐の充実化を追求すると同時に、次のリーダーを選定していく準備も進める」と展望を語る。関西では、渡會理事長が構想するような取り組みが広がっており、東海での先行きは極めて明るいことが理解できる。時代の先端を見据え、現場で働く作業者と、顧客である元請け企業の要望を満たせるのか。これまでの先にある未来に向け、「枠」に囚われない新たな取り組みに期待したい。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。