河津建設が「人との輪」を重視した挑戦を追求
更新日:2025/10/10
「創業150年の喜びを、皆で分かち合いたい」。
1914年から続く河津建設(静岡県下田市)の河津元常務が、胸に抱き続けている目標である。昨年発表された人口戦略会議の分析では、下田市を含めた伊豆半島の5市町が「消滅可能性自治体」に該当するなど、過酷な現実は依然として存在する。しかし、この容易ではない状況を徐々にでも克服するため、社内の教育制度を抜本的に見直せたことが「安定した新卒採用・高い定着率の維持に繋がった」と近年の変化を語る。

河津常務は、新卒でスーパーゼネコン・鹿島建設(東京都港区)に勤務後、家業である同社に参画した経緯を持つ。鹿島建設では東京土木支店に所属し、地下鉄駅の改良工事など数々の大規模プロジェクトに携われた。順調にキャリアを積む中、父でもある社長・市元氏から要請を受けたことで、「非常に悩んだが、地域への思いが勝る形となった」と入社を決意。当初から土木現場を統括し、安定した受注量で利益も確保していたが、間もなく「若手社員同士がコミュニケーションする機会が少ない」と危機感を抱き、教育制度の改革に着手。四半期に1度のペースで「若手勉強会」を開催し、資格試験の対策や現場の知識提供の他、レクリエーションの機会などを設けることで、若手同士のコミュニケーション活性化を試みている。勉強会が10年以上も継続できている効果もあり、社内では誰も孤立せず、各々がサポートし合える環境も根付いているようだ。


若手勉強会が象徴するように、河津常務の哲学の中心には常に「人との輪」が存在する。「社員一人ひとりが安心かつ誇りを持って働ける環境づくりこそが、持続的な企業成長には不可欠だ」という確固たる理念を持つ。この考えは、具体的な制度改革にも表れており、近年ではDX促進や業務プロセスの改善、完全週休2日制なども積極的に導入。休日数は年間125日に達し、業界でもトップクラスの水準を実現できたという。採用面でも「大卒の採用市場において、大都市の企業と戦うのは現実的ではない」と判断し、地元の高校生にターゲットを絞れたことで、効率的に新卒の採用に成功している。現在は「リファラル採用が決まった際、インセンティブを出すなど工夫すれば、より社員が主役となる職場環境を作れるのでは?」と新たな仕組みづくりも模索している。



河津常務は、地元に密着した建設会社としての役割を果たすには、「今後は更なる社内の連携強化が重要な要素になる」と見立てを述べる。創業から長い期間をかけて培ってきた確かな信頼と技術。これらの全てを総動員し、人々の暮らし・生命を守るインフラの整備を担っていくという使命感は誰よりも強い。取材中も「地域が元気でなければ、会社の未来もない」というセリフが何度も出ており、実際に国内外の大型クルーズ船の受け入れに協力するなど、地元に欠かせない存在として確かな実績も残している。「人の力=会社の力」を信念に、社員一丸に動く河津建設。地域発展に向けた挑戦を続ける同社が、伊豆半島をより豊かな未来に導き続けることに期待したい。



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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。