M&Aによる業界改革を実現へ。KP technologiesが新事業部を創設
更新日:2025/5/2
建設業に特化した電子商取引クラウドサービス「建設PAD」を提供するKP technologies(東京都港区)は昨年、社内にM&A事業部を創設した。責任者には野坂幸司氏が就任し、今後の先行きに悩む中小建設業に対して、買い手先の確保など徹底したサポートを開始している。現在、トーキョー工務店(東京都渋谷区)の代表取締役を務め、過去に建設会社4社の事業承継やM&Aなどを主導した野坂氏の経験を考慮しての抜擢となった。
部署の設立に当たり、KP technologiesの青木社長は「建設PADの導入企業にヒアリングをする中、後継者・人手不足などの要因で買収先を探す会社が多いことを知り、今回の決断に至った。野坂氏とは5年以上の関係で気心も知れている。建設業界の課題を解決するため、2人3脚で取り組んでいきたい」と意気込みを語った。
設業に特化した組織ならではの施策を採用している。野坂氏は、「会社の成長ストーリーにおいて、最重要視すべき点は『人』と『蓄積してきた技術』。M&Aによる円滑な事業承継には、従業員と会社、取引先の全方位において、ウィン・ウィンの関係を作ることが不可欠。企業が長く培ってきた人と技術をスムーズに引き継ぐことを意識し、業務に注力していきたい」と語る。過去の買収では、全社員の雇用を保証し、買収資金の1部を株式の代金にするなど、オーナー企業からの継続性を保つ気遣いも怠らなかった。このような経験者が専門家として、親身に相談に応対できることは、依頼者にとって心強い。野坂氏は「建設業界における中小企業では、バックオフィス業務が膨大になっている。これをDX化の徹底により、コア業務に集中できる環境を整備することが、第1歩になる」と見通しを話した。青木社長も「建設業に特化したM&Aを取り扱う部署として、細部に神経を張り巡らせた対応をしていきたい」と先を見据えている。
野坂氏は「当面は、依頼から初期面談までの工程のオンライン化を徹底し、M&A事業部自体の効率化を進めていく方針だ。東北方面では復興需要が途既に絶え始め、地方から現状の放置を続けると倒産の可能性もあるとの声も聞こえてきている。このような企業に対して、『人と技術の継承を諦めない手段はまだある』と自信を持って提示できるよう、今回新設した部署で全力を尽くしていきたい」と意気込みを語った。M&Aという選択肢が、会社継続に悩む業界にとって、大きなヒントになることは間違いない。




この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。