ケンシンが「シングルマザー×建設業」で人手不足を解決
更新日:2025/4/25
「シングルマザーの脱貧困と建設会社の雇用創出を実現する」。
人材会社で勤務経験があるケンシン(東京都新宿区)の駒田みゆき氏は、シングルマザーに特化した建設業の採用サービスを発案した。Instagram やTikTok など、SNSだけで募ったシングルマザーの求職者を建設企業に紹介しており、昨年夏に正式なリリースを開始。現在では、Instagramのフォロワー数は8800人、LINE登録者数も550人を突破するなど躍進を見せている。

同サービスでは、企業からのオファーに対し、求職者との間にある認識のギャップを駒田氏が埋めながらフォローする。シングルマザーの収入安定とキャリアアップを重視するため、原則として取り扱う求人は正社員に限定。現場事務や現場監督、CADオペレーターなど専門職を中心に対応しており、応募者の大半が未経験ということも特徴だ。駒田氏は、「金銭的に苦しい思いをすることの多いシングルマザーと、慢性的な人手不足が叫ばれる建設業界との需給を勘案し、このサービスを思い付いた」と事業スタートの経緯を語る。就業当初は、軽作業や現場サポートから始めることが多く、子育ての状況に応じて資格の取得を薦めるなど、歩調を合わせた収入アップに繋がるアドバイス・サポートも実施する。「建設業は資格社会。初期は、子供が小さくフルでの勤務が難しい場合もあるが、働きながら業界の特色を理解していくと、空き時間を資格取得に充てる方も増えていく。子育てに多くの費用が掛かるのは子供が大きくなってから。『会社の財産は、社内で徐々に育てる』という大前提を建設会社にもご理解頂き、共に段階を踏んだ成長ができるスタイルを目指している」と思いを語る。夫であり社長を務める駒田裕樹氏は、オンライン講座を運営しており、建築施工管理技士の合格を支援する。建設会社で働きながら次のステージを見据えるシングルマザーが、オンライン講座を経て資格を取ることでキャリアアップを果たしていく。人材採用から資格取得者の育成までを網羅する、唯一無二の循環が社内で構築できている点は魅力的である。


現在は、首都圏を中心に事業を展開しているが、駒田氏は「今年は全国に広げていくことも視野に活動を続けたい」と目標を語る。シングルマザーの貧困率は約5割。全国にケンシンのサービスが、どのような形を経て浸透していくか。また、建設業界がどのようなスタンスで迎え入れるかは、人手不足が常態化する中で重要な鍵になりそうだ。「労働者人口の減少が推移する中、当社にしかできない手法で流れを変える取り組みを心掛けていく。シングルマザーには、モチベーションの高い方が本当に多い。現実として建設業界内には、前例に囚われた慣習や偏見などがまだ多く残るが、このような厚き壁を打破できるよう、今後も全力を尽くしていきたい」と意気込みを語った。

ケンシンのTikTok= https://www.tiktok.com/@kenshin.work?t=8ePKm8dIfxq&r=1
ご相談はQLコードより

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。