DX導入で難局打破へ。北川建設が組織の盤石化・拡大に着手
更新日:2025/5/20
昨年、北川建設(東京都品川区)が、建設業に特化した経営管理ツールを導入した。導入の理由を北川強社長は「2021年12月の創業以来、かなりの紆余曲折を経てここまで来たが、ようやく利益を生み出す仕組み作りを考える余裕ができ決断した」と語る。当初は、「簡易的なソフトなら自社で開発した方が安価なのでは?」とも考えていたが、「製品が当社の要望通りフルカスタマイズできること。また、担当者が就き、日常的に経営面のアドバイスまでして貰えることが決め手となった」と経緯を話す。特に工事案件ごとに利益率を算出し、そのデータを基に会社としての指針を示せるようになったことで、先の見通しを全社員に見える化できた点が大きかったようだ。

北川社長は、10代の頃から建設現場での工事に携わり、所属していた会社では役員として組織を統括した経験を持つ。現在は、木造住宅の骨組み構造を強化し、建ぺい率を下げることなく建物をリニューアルする事業に注力。外注に依存するのではなく、自社の大工を要所に配置することで低コストの施工を提供しており、「このシステムを量産化することが当面の目標だ」と先を見据える。確かな技術と、顧客に安心感を与えるアフターケア。社内には、70歳と67歳を迎えるベテラン社員が2人所属しており、最近では「熟練した技術を身に付けたいので、入社を希望した」と話す若手も増えているという。この流れを良き機会として北川社長は、「やる気のある若手大工を積極的に採用し、円熟した技術の継承を続けることで、組織基盤も強化する」との方針を確立。応募者が「会社のYouTubeやInstagram、TikTokなどのSNSを見て、北川建設を知った」と口を揃えている現実を受け、「社員の採用・育成を充実化させるためにも、SNSでの発信も活発化させる」と、地道な活動を徹底するスタンスも魅力的である。


「組織の盤石化と拡大」という明瞭な目標を持つ北川社長だが、心の中には「早く私自身を超える若手幹部を育て上げたい」という本音もあるという。理由は「最近では、『建設業はカッコ良い!』というイメージが薄れている印象を受ける。この現状を覆すには、『北川建設はモノ作りを重視し、やる気次第では若手がゼロからでも偉くなれる』と認知されるよう、まずは自社で実績を積み上げ、それを周知する手法が有効と考えているから」と率直に述べる。自社の発展は最優先事項。しかし、業界全体が活性化しなければ、その影響はいずれ自身にも降りかかり衰退に繋がると、物事をマクロかつミクロな視点で捉えられる点も特徴的である。「直近では、来期の売り上げを4億、社員を4人増員できるよう、日々の業務を進めていく。当社は今、ベテランと若手が融合を果たし、更なる躍進を遂げる前段階という重要な場面に直面している。今後はDXも活用しながらこの難局を打破し、建設業界全体に少しでも良い影響が与えられるよう、全力を尽くしていきたい」。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。