巧拓が日本足場会を基軸にした成長を誓う
更新日:2025/7/23
巧拓(山形県東根市)の荒井幸俊社長は、昨年の夏に日本足場会の理事に就任した。同会は、2022年に立ち上げられた足場施工を主体とする専門工事団体。現在の会員数は64社まで増加しており、会員企業が取り組む先進的な事例を学ぶ機会となっている。自己流の組織運営に頼る部分の多かった荒井社長は、日本足場会を「新たな気付きを与えられた大きなきっかけ」と語っており、加盟以降は新規入会者にも様々アドバイスを実施している。

会社は今年8月に創業5年目を迎える。今期からは「人材獲得と会社の盤石化を実現し、更なる成長を目指すこと」を目標に掲げ、業界に新しい風を吹き込むべく日々奮闘する。荒井社長は20歳の頃、身体を動かす仕事に魅力を感じ、足場工事の世界に飛び込んだ。山形県内にある複数の足場工事会社で修行を重ねた後に独立。2020年に法人化を果たし、今なお試行錯誤を繰り返している。

荒井社長は、入職当初を「山形では個人事業主として働くスタイルが一般的だったが、実は『個人事業主』という雇用形態すら知らなかった」と恥ずかしそうに振り返る。社会保険や厚生年金の制度が無いことに疑問も抱かなかったが、異業種で働く知人の現状を見聞きしたことで、自身の脆弱かつ不安定な立場を痛感。「このままでは職人が現場を離れていく。持続可能に職人を育てられる組織を作らなければ、業界全体が埋没する」と危機感が今も自身を支えているという。
巧拓では現在、福利厚生の充実化を含めた労働環境の整備に取り組む。特に材料・トラックの整理整頓、休憩所の清掃など、社内の細部にわたる管理の徹底を意識。従業員に「社会人としての自覚を持てる職場」を提供することで、仕事面だけでなく人間としての成長もを期待しており、目の前の変えられる点を1つずつ改善する。このような積み重ねを続けることで、「業界全体の課題である、賃金の底上げや就業規則の見直しにも繋げていければ」と見通す。若手の職人育成にも手を抜かず、資格所得の支援や手厚い施工技術のフォローなど、出来る限りの社内体制を心掛けていることも特徴である。
今後も「地場に根差した企業経営を推進するスタンスは変わらない」と意向を述べる。同じ山県県には、大洋工業やレリアンスといった日本足場会に所属する同志も存在する。常に切磋琢磨・叱咤激励できる関係性は心強く、「引き続き、足場業界をより良い世界に変えていけるよう最善を尽くす」と固い決意を見せる。当面の目標は、「社員のやる気・能力を引き出せる会社を確立すること」。徐々にだが足場業界に前向きな変化の兆しが見え始めていることは間違いない。
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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。