「ROUTE508」の軌跡を舗装する 幸和建設工業
更新日:2025/11/12
幸和建設工業(横浜市戸塚区)の武田幸光社長は、「今の仕事は永遠ではなく、いかなる状況下でも安定受注のできる体制を構築しなければ、いずれ行き詰まると考えている」と警鐘を鳴らす。ガス管の入れ替えなどの舗装工事を主軸に、堅実な経営基盤を続けてきた一方、事業が軌道に乗り始める時期を見て経営の多角化を推進。30歳で新規事業を任され、100人規模に及ぶ営業部隊の統括部長として、関東の拠点を奔走した過去を持つ。「あらゆる物事が手探りで苦労は尽きなかったが、着実に事業を成長させた実績が今の私を支えている」と胸を張る姿が勇ましい。

新しい事業も軌道に乗り始めた矢先、主力である土木事業の中心を担っていた弟が突如倒れたことで「状況は一変した」と苦々しそうに語る。建築部門の縮小を余儀なくされ、土木の責任者を務めることになったが、そこで待ち受けていたのは「公共事業の入札競争が激化し、会社全体が勤続疲労に陥る厳しい現実だった」と当時を振り返る。五里霧中の中、逃げ出したい心境に苛まれた日々もあった。しかし武田社長は、冷静に分析を重ね「不採算の事業から手を引き、社内のリソースをガス管舗装復旧工事に集中させた」と下した決断の経緯を話す。拡大路線から一転しての「選択と集中」。原点に立ち返った戦略は功を奏し劇的に経営は改善し、現在は公共事業の拡大を視野に、社員個々のスキルアップの支援を目指しているようだ。
社外の活動では、地域課題の解決とコミュニティの形成に取り組む「地域貢献ラボ」の戸塚支部長を務める。今年6月には、地域の親子と一緒に製作していたツリーハウスを完成させた。災害時のペット同行避難や子どもたちの安全確保を目的に建設したツリーは、日頃から子供が集まる地元のシンボルとなっており、「常に地域から必要とされ続ける空間を念頭に事業を想定している」と基本スタンスを述べる。まだ始まったばかりの活動だが、既にツリーが日常に定着している様子を見られることは「この上なく嬉しく、今後の原動力になる」と目を輝かせながら話す姿も印象的である。

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幸和建設工業は、昨年社名である「幸和」を数字にもじった、ロゴ「ROUTE508」を策定した。日本の国道は507号線までしかない。しかし、武田社長は「国道507号線より先の道を、社員と共に歩み作っていくというメッセージを込めた」と誇らしげに語る。「当社が目指す先は、社員から『この会社で働けて良かった!』と心から思われる環境を整備すること」。道をつくり、人を育て、地域を元気にする。同社が舗装していく「ROUTE508」は、確かな技術と信念に裏打ちされ、その軌跡は横浜の地から未来へと一直線に繋がっていくはずである。

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この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。








