クラフトバンク総研

久保電機が「求められる集団」への変貌を目指す

更新日:2025/4/30

創業100周年を迎えた久保電機(香川県観音寺市)が、昨年6月に三和電業グループ入りを果たした。社長に抜擢されたのは、三和電業で関西支店長を務めていた中川晃良氏。関西支店の売り上げを3倍以上に伸ばし、社員数も10人ほど増員できた実績が評価され、「正しい姿勢で、常に新しい挑戦をすること」を目標に新たなスタートを切っている。

中川社長は、現在の課題を「売り上げの構成スタイルが、官公庁に偏り過ぎていること」と分析。現状のままでは、想定外の変動が巻き起こった場合、売り上げの大部分が無くなる可能性を指摘し、官公庁の他にもゼネコンやエンドユーザー、新規顧客など複数の柱を確立することを見越し、泥臭い開拓営業を開始した。「これまでは幸運なことに、競合が不在の中で仕事ができる状況が続いていた。しかし、ゼネコンでの事業展開では、複数のライバルが居る中で勝負を強いられる形になり、その時に必ずポイントになるのがコストと利益率への意識。早期に新しい売り上げ手段を確保し、厳しい環境化でも利益を重視できる組織に変えていきたい」と見立てを述べる。工事の原価管理に関しては、特に徹底する必要があるようで「勝ち続けるには競争力の習得が必須条件。当社の領域に競合が参入しても、冷静に対応できる体質に変われるよう、当面の間は社員の意識改革に注力する」と話す。既に中川社長は「向こう3年を掛けて柱を確立する為、がむしゃらな活動を続ける」と覚悟を決めており、就任直後から全社員と綿密な対話を実施。現在は、自身が三和電業で学んだ「人として正しい考え方(フィロソフィ)」の伝承を心掛けており、これがどのような過程で社員に浸透するか興味深い。

今後は久保電機が「お客さまや協力会社さま、地域、業界、家族など様々な方々から『求められる集団』に変貌を遂げられるよう全力を尽くす。実現には、社員の意識改革を完遂する必要があるなど、まだ課題は多い状況だ。売り上げ増大など細かな目標もあるが、まず社員全員が『人』として正しい道を歩み、誇りを持って仕事に取り掛かれるよう環境整備を優先する」と先を見据える。

社員からの要望にあった社内のリニューアル工事やDX導入なども実施した効果も後押しとなり、社長就任以降で7人も社員を増員できた。そのうちの1人は、現メンバーから「『社内は活気に溢れていて、楽しく働けるように変わったよ』という評判を聞き、もう一度働きたいと考えた」と申し出た元社員だったことに、中川社長は「会社が内側から変わり始めていることを実感でき、この上ない喜びを皆と共有できた」と振り返る。4月からは、地元の高校から新入社員4人が入社する。業界全体では、人手不足が叫ばれる中、1年弱で7人の社員増加を実現する久保電機には、特異な魅力があることが理解できる。「社員が増えたこと=当社の魅力と熱意が届いた結果。引き続き、社員と共に新たな挑戦に挑むことで、会社を次のステージに押し上げていきたい」と展望を述べた。

新着記事

  • 2025.05.30

    久志本組が200年企業に向けた取り組みをスタート

     久志本組(三重県四日市市)の清水良保社長は、日頃から社員に「地域の方から頼られた時に『嬉しい』と素朴に感じられる人であってほしい」と伝えている。会社は、創業から120年以上の歴史を四日市市に刻み続けてきた。シンプルでオ […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2025.05.27

    ショールーム開設のハマニ。左官技術の伝承に全力を尽くす

    「とにかく職人の採用・育成の改革が急務だと感じた」。  左官・土木工事を手掛けるハマニ(静岡県浜松市)の河合滋社長は、慣習として続けてきた「見て学ぶ」「技術を盗んで覚える」という従来の職人文化に限界を感じ、体制の移行を決 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.05.23

    「誰かの笑顔のために」、三瓶工業がDX駆使で新たなステージへ

     ㈱三瓶工業(山形県天童市)は2022年、設立50周年を記念して会社のロゴや制服、ヘルメットなどのデザインを刷新した。アイデア作りからデザイン製作までを一括で依頼した先は東北芸術工科大学。地元の芸大生との連携により、これ […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.05.14

    事前防災の定着に最善を尽くす 目黒建設業防災連合会

     目黒建設業防災連合会は2021年5月に発足し、初代会長には加藤公章氏(加藤電気工事)が就任した。同連合会は、目黒区内の建設・電気・設備・造園の4団体から構成されており、加藤会長は「地元の建設業が何をすべきかを突き詰めた […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子