LOOPLACEがスタートアップに特化した展開を進める
更新日:2025/5/2
LOOPLACE(東京都千代田区)は、自社ブランド「gran+(グランプラス)」シリーズを駆使し、古い建物や空間を活かすことで高収益物件に変える、不動産再生カンパニーである。この度、政府の表明した「スタートアップ支援強化」を受け、飯田泰敬社長は「gran+が、スタートアップやベンチャー企業に、更に適応できるよう重点的な浸透を目指す」という方針を固めた。gran+は、築古ビルなどを新しい用途で企画開発し、デザイン性のあるリノベーション施工を手掛けることで、今までにない付加価値を提供するセットアップオフィス・ブランド。政府が5年後に国内のスタートアップへの投資額を、現在の8000億円から10兆円に引き上げるという目標を見据え、新たな挑戦を開始する形になった。

飯田社長は、「現状で国内のスタートアップは、社員数30人未満の会社が約85%というデータがある。おそらくこの数字は、政府の施策により会社数が、新たに10万社創出できても変わらないはずだ。当社は、この5~30人の社員数であるスタートアップを対象に、gran+の展開に力を入れていきたい」と決断の経緯を語る。gran+は元来、「オーナーが修繕等に費用を掛けなくなる→賃料が下がる→オーナーの収入が減る→テナントが入らなくなる→物件を手放す」という悪循環を改善するために開発した企画。実際に空きビルに近い状態の物件をLOOPLACEが借り上げ、自社でリニューアル後にセットアップし貸し出してみると、賃料を1.5倍に引き上げても都心では入居希望者が続出。入居した企業からも「快適な場所で仕事ができるようになった」という感謝の声が届いた。この体験を機に、飯田社長は「当社の目的は、不動産を再生することであり、売買や管理、建築は、あくまでも手段の1つだと確信した」と回想する。建物の企画、設計、施工から運営までをワンストップで担うことで、入居者のコストを軽減し、オーナーの収益向上も叶える。2016年の正式スタート以降、gran+は飛躍的な伸びを見せており、飯田社長は「当面は、gran+の運営管理数を増やすことで、業界内で独自のポジションを確立するという明確な目標ができた」と見通しを語る。

LOOPLACEに所属する設計、施工の建築を担う部門の社員数は16人。施工管理者、設計者などが、社員の半数近くを職人が占める理由を聞くと、飯田社長は「経営者として『企業の存続理由は?』『何のために働くか?』を突き詰めると、『社員が日々の労働の中で、成長と幸福を実感してほしい』という考えに行き着いた。当社は、既存の建物に新たな価値を付け加え提案する企業。この『ものづくり』における過程の大部分は、自社で手掛けたいという強い思いがある」と本音を話す。16歳から建設業界に入り、紆余曲折を経ながら様々な経験を積んできた。試行錯誤を繰り返し、会社経営に行き詰まった経験もある飯田社長だからこそ、決して「効率」では割り切れない選択と決断を下す。飯田社長から発せられる「人こそ全て」というワードは、何とも含蓄のある一言である。

「この数年の間に、gran+の更なる普及促進が達成できるよう、会社一体となった活動を続けていく。実現するには、組織運営の再構築や不動産テックの導入など課題も多い。しかし、当社の使命は、働く場を好きな場に変えること。今後は、『都心で働く場所を求めるスタートアップ・ベンチャーは、LOOPLACEに頼めば解決する』という評判が定着するよう、あらゆる手段を尽くしていきたい」。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。