オテツ工法の普及に全力を尽くす 協同組合Masters
更新日:2025/6/5
協同組合Masters(渡辺広明代表理事)では、土留部材引抜同時充填工法(ジオテツ工法)の普及促進に力を入れている。同工法は、土留め材の引抜きに伴う地盤沈下を抑制する独自の技術。従来残置していた土留め材を引抜きと同時に回収することでコストを削減し、CO2排出も抑制する。現在の会員企業数は110社。2代目の代表理事を務める渡辺広明氏は、「ジオテツ工法は、中小建設企業こそ駆使すべきであると積極的にPRしていきたい」と意気込みを述べる。

渡辺代表理事は、西松建設で勤務後、愛媛県にある地場ゼネコンの白石建設工業(愛媛県新居浜市)を経て起業。ほぼ同時期に協同組合Mastersに参画した。白石建設工業に在籍時は、全国建設青年会議の愛媛メンバーとして、積極的な活動を実施した。この時の体験を基に「優れた技能があれば独占するのではなく、様々な企業と共有することで業界の発展に貢献すべき」との考えが芽生え退職を決意。自身も研究開発に関わったジオテツ工法を、Mastersという全国組織の中で事業化することで、工法拡販と共に現場での生産性向上を組合員各社に提供する立場を取るようになった。「Mastersの組合員になれば、国土交通省を始めとした行政機関や大手建設会社とも繋がりを持てることもある。ここ7~8年で組合員数は急増し、20代~40代の若手経営者も多い。10人にも満たない建設業が、特殊な工法を使いこなすことで飛躍的な成長を遂げられる」とメリットを語る。Master組合では地盤環境事業部会の他、ECO環境事業部会、水・環境事業部会、IT事業部会などが存在しており、国土交通省の他経済産業省や農林水産省などの認可も得ている。組合に加盟すれば、社会的地位の確保・公益的役割の一端を担えていることが特徴となっている。



近々の目標を「会員企業200社を目指した活動を続けていくこと」と渡辺代表理事は見通しを話す。メンバーの増加により組合としての説得力を増やし、会員のビジネスチャンスを拡張していく意向が強いようだ。まだ47都道府県の中で事業所のない地域も多少あり、「実は組合としての課題も多い」と微笑みながら話す姿も印象的である。「ジオテツ工法は、10月で施工実績が900件を突破した確かな技術。今後も組合の事業展開が建設業界の発展に繋がると信じ、堅実な道を見極めていきたい」と展望を語る。ジオテツ工法研究会の顧問には82歳の現役技術屋も在籍しており、20代~40代の若い現場技術者や職人と毎日LINE交換して、若さを保っている。特異な発展・躍進を見せ続ける協同組合Mastersの先行きから目が離せない。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。