目黒区・情報政策推進部が、「人」を重視したDX推進を志向
更新日:2025/4/25
目黒区に情報政策推進部が創設されて4年が経過した。今年4月には、同部署の情報政策課・課長に鎌田將司氏が就任。「デジタル化を通じて、区民の生活向上や庁内の業務改善を担っており、同じDX戦略課(2021年3月新設)と共に着実な歩みを続けたい」と意気込みを語る。

鎌田課長はシステムエンジニアとして民間企業に勤務し、企業の業務効率化に携わった経験を持つ。「従来から公務員志望だったが、行政が手掛ける街づくりのワークショップなどに参加したことで、『より区民に近い環境で生活に貢献したい』と考え入庁を決意した」と当時を振り返る。公務員としてのキャリアは、みどりと公園課(現・みどり土木政策課 )でスタート。みどりの推進や緑化計画に関わった後、都庁への出向や、人事、介護関連の部署などを経て情報政策課に辿り着いた。鎌田課長は、「コロナ禍でDX化は飛躍的に進んだ。目黒区でもPC端末の変更やテレワークの導入など、働き方改革を順次進めているが、他の自治体と同様、DX推進の遅れが顕著なことは否めない」と現況を語る。DX化を進める上で課題は複数存在するが、最初に障壁となるのは「人」だと分析。「従来のやり方を変えることや、新たな取り組みの開始において、不安や抵抗が生じるのは当然のこと。まずはマイナスのイメージを払拭し、理解の前提に立つことから全てが始まる」と経験則を話す。「技術的な話は、理解が得られた過程を踏んでから、私たちが伴走する形で進めていく。良いシステム・ツールが導入されても、適切に活用されていないケースは多い。ミスマッチを防ぐためにも、現場のニーズを細かくヒアリングし、最適な技術を模索する必要がある」と続ける。
鎌田課長には、かつて庁内で新たなツールを導入した際、職員の多くから反対を受け四苦八苦した過去があった。 現在の立て板に水を流すよう理路整然と解説できるのは、多様な現場で人々と向き合い、気の遠くなるようなトライ&エラーを繰り返した軌跡によるものと推察できる。
建設業に対しては、「2024年度は、残業時間・上限規制罰則化が適用されるなど、DX導入が経営の鍵となる絶妙なタイミング。DX導入を見誤った企業は生き残れない時代に突入したと言っても過言ではない。建設業は、公共工事の届け出を中心に行政との接点が非常に多い業種。課題が山積みとなっている電子申請の推奨など、行政側も柔軟な対応を見せることで、民間企業のサポートできるよう取り組みたい」と意欲を見せる。建設企業にとって、2024年度以降の成長を語る上で最も重要な概念となっており、経営者が今後どのような決断をするかが企業の存続に直結することは間違いないようだ。
目黒区では、DX化に向けた基本的な考え方や方向性などを示す、「目黒区DXビジョン」を公表している。テクノロジーで行政サービスの利便性や区民生活の向上を目指しており、現在は具体的な施策の検討や実施に入っている。近年では、職員研修や専門知識を持つ外部人材の採用を強化するなど、技術革新に対する具現化にも積極的だ。鎌田課長は「行政は、前例踏襲や関係部署との調整であらゆる物事が遅過ぎるという印象を多くの方に持たれている。しかし、先行きの不透明な時代が続く中、これまでと同じスピード感では、もはや企業だけでなく行政の延命すら難しい現実が近付いていることは明白だ。制約のある中だが、行政も区民・企業がこの難局を乗り切れるよう全力でバックアップしていきたい」と並々ならぬ意志を見せる。「過去の知識と経験を総動員し、目黒区の可能性を拡張する」。鎌田課長のバイタリティは強く、目黒区から行政のDXに関する意識付けが変化していく見込みは高い。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。