事前防災の定着に最善を尽くす 目黒建設業防災連合会
更新日:2025/5/13
目黒建設業防災連合会は2021年5月に発足し、初代会長には加藤公章氏(加藤電気工事)が就任した。同連合会は、目黒区内の建設・電気・設備・造園の4団体から構成されており、加藤会長は「地元の建設業が何をすべきかを突き詰めた結果、『それぞれの専門知識・技術を駆使して防災対策に取り掛かること』という形に行き着いた」と経緯を語る。各業種の強みを活かし、建設業の団体として目黒区の安心・安全に貢献できるよう、それぞれの企業が日々の活動を盛り立てている。

初年度より連合会は、目黒区と水防や除雪、道路障害物除去など応急対策活動の3協定を締結。会員は、公開水防訓練や防災訓練に参加する他、大型台風の接近する日や大雪が予想される日などは、相互に連絡を取り合い、災害時を想定し日頃から準備を進めている。組織内には災害工作隊を編成し、北部・南部のエリア毎に担当者・企業を配置。北部には、駒場・大橋、青葉台、目黒・三田地区。南部では、八雲・柿の木坂・東根、大岡山・緑が丘地区と細かく部隊を分類し、夏と秋の年2回ほど訓練も実施する。加藤会長は「建物倒壊の際は水・機械が止まるので電気業者、避難所での作業はトイレ・空調が必要のため設備業者が応対を心掛けるなど、災害の状況に応じた対策が現場で再現できるようトレーニングをしている。目黒区には坂が多く、30年前には雪による転倒で死傷者が出たこともあった。その都度、区の方に確認を取るのは双方が骨の折れる作業になるが、職員と現場で連携する場合も多い。これは地域を守るためには必要不可欠な作業と考え、引き続き万全な対策を心掛けていく」と詳細を話す。盤石な体制を築けている為、天変地異の時を含め目黒区内で大きな怪我人が出たケースは現状ではない。万が一に備えた綿密な準備と日々の意思疎通。誰もが重要事項と知りつつ、来るべき日に備えた日常的な意識・行動が続けられることで、地域の安全・安心に繋げられている現実は意義深いものがある。

加藤会長は、「発足以来、地場に根差してきた活動を続けられている反面、まだ地域の方から『ご苦労さまです。ところで皆さまは、どちらの方々でしょうか?』と率直に聞かれることもある。目黒区の工事を請け負う企業の団体として、我々の行動が目黒区民の方に浸透することで、更なる迅速な復旧作業に当たれるよう、全力を尽くしたい」と本音を述べる。毎年9月には、目黒区を挙げたフェスティバルが目黒区立目黒中央中学校で開催されている。「このような機会を活かし、地域の人々と触れ合うことで、日々の地道な業務も認知して頂くことができれば、これ以上幸せなことはない」と加藤会長は笑みながら話す。事前防災は、日々の生活の延長線上にこそ存在する。全国の各自治体が様々な活動を実施しているが、筆者は目黒建設業防災連合会の日常的な活動こそ事前防災の有力な選択肢と信じて疑わない。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。