「蓄光ポリウレア」を突破口に。三倉工業が堅実経営を継続
更新日:2025/4/25
下水道工事を手掛ける三倉工業(東京都板橋区)は、5月に「蓄光ポリウレア」をNETIS(新技術情報提供システム)登録した。蓄光ポリウレアは、蓄光顔料とクリアポリウレア樹脂を用いた成形品の塗布により、光源のない暗所でも視認誘導を実現し、紫外線による経年劣化を防ぐ技術。5年相当の負荷を与えても効果が低下しにくいことを立証し、新技術としてNETISに承認された。


髙橋俊樹社長は、「12~3年前から取り扱いを始めたポリウレアだったが、当時は『東京オリンピック終了後は、工事部門の需要が激減するに違いない』という危機感から取り組みを開始した」と経緯を語る。2021年からは、エルティーアイ(京都市右京区)との提携により、手塗りのポリウレアと蓄光の融合を果たして施工の幅を拡張。その後、着実に実績を積み重ね続けたことが、今回のNETIS登録に繋がった。

髙橋社長が三倉工業の社長に就いたのは2007年。就任から間もなくしてリーマンショックが発生。金融機関の薦めにより、経営の多角化や設備投資を実施していた企業が組織運営に苦しむ状況を見て、髙橋社長は「当社は、公共工事を粛々と取り組むしかない状態だったが、他人事ではないと気持ちを入れ直すきっかけになった。何か新しい選択肢を設けなければ、いずれジリ貧に陥るのは明らかと危機感を持った」と当時を振り返る。これを機に発注量・単価の減少や、極端な薄利で苦しむ中でも、ポリウレアを見出して徐々に事業の幅を広げ始めたという。先が見えない中で、社長を含め社内の2人だけで始めた新規事業。当初は、営業のみに専念することで精一杯だったが、数年後には黒字化に成功。現在では、下水道工事と共に会社の両輪として機能し、会社の経営を軌道に乗せることが出来ている。

「当社は、あくまで下水道をメインに事業を展開する工事会社。経営者として常に新しい突破口を模索するスタンスは堅持しつつ、今後も変わらず下水道工事を最優先にするスタイルを保ち続けていく」と決意を語る。工事部隊は若手・中堅が充実化しており、現在はポリウレア部門の人材確保に意識が向いているようだ。髙橋社長の目指す先は、「社員が誇りを持って働ける会社に変わり続けること」。筆者が、「そのために今必要なことは?」と聞くと、「日頃からあらゆる物事に地道かつ誠意を持って取り組むしかない」という明確な返答があった。三倉工業の堅実な維持管理工事は、今日も住民の快適な生活環境を守り、下水道管の破損や道路陥没などの発生を未然に防いでいる。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。