グループ売り上げ1000億円を視野に事業拡張へ 永賢組
更新日:2025/4/29
永賢組(愛知県春日井市)の売り上げが、今期にも100億円を超える見通しである。祖父が創業した会社の3代目社長として、組織を牽引するのは永草孝憲氏。30歳で経営者としてのバトンを引き継いだが、取締役に就任から間もなくして6億円もの債務超過を知り、税理士・コンサルタントとも連携し克服した経験を持つ。「絶対に人員削減はしない」と覚悟を決め、経営サイドから再建を手掛けた日々。永草社長は、「当初は変革に抵抗を見せる社員も居て心身は疲弊したが、真摯に向き合い続けたことで徐々に改善の道筋を付けられた」と振り返る。現在は、グループ全体で10の部門を組成し、「well-being」をコンセプトに社会課題を解決できる体制を目指している。

今年4月に実施した企業を合わせると、永賢組はこれまで5社のM&Aを実現。後継者が居ない会社を引き継ぎ、自身が若い年齢で経営を担ってきた経験を伝承することで、建設業界の活性化を心掛けている。社内では、建築・土木・開発など5つの事業部が存在しており、全ての責任と決定権を所属長に委譲。各部署のトップが、経営者のように自らの意志と決断で動ける仕組みを作り、非常事態以外は社長が出なくても、それぞれの判断で作動する組織を構築した。永草社長の原動力は、「祖父・父が築いた基盤を重視し、多くの人に役立つ事業を展開すること」。亡くなる2日前に父親から病床で「売り上げを100億にしたかった」と告げられた後悔を胸に、トライ&エラーの繰り返しを経て、現在地に辿り着けたようだ。

会社としての最終的な目標を、永草社長は「売上1000億円規模のグループ企業を作ることに決めた」と宣言する。長期的な視野を併せ持ちながらも、直近ではリニューアル産業の需要を獲得する準備も進めており、「生産性を大幅に上げるため、9月からはAI導入を見据えてアメリカに研究の視察に行く」とあらゆる方位にアンテナを張り巡らせる。最優先すべきは、「社員・お客様・パートナー事業者、地域社会の幸福」と語る通り、CSR活動として全国のイオンモールで「100万人のクラシックライブ」と銘打ったイベントも定期的に開催。建設事業者として、地域に新たなコミュニティーを作ることで、地元の強化を手掛けている点も特徴である。

永草社長は、積極的にM&Aを進めている理由を「将来的には、当社から多くの起業家を輩出し、その全員がどのような状況下でも健全な経営ができるシステムを完成させたいから」と明確に述べる。社内での起業家を育成する仕掛けは既に始まっており、「実現までの道のりには、AIを含めたDXを更に駆使し、未来型の建設会社として確固たる地位を築く必要がある」と見立てを話す。現段階でも永賢組に賛同する企業は増えている。今後も永賢組は、この追い風を活かすことで事業拡大を続け、地域を主軸にした幸福企業としての価値の向上していく方針である。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。