更なる高みを見据えた経営に着手 ナイガイ
更新日:2025/8/22
「実は社長就任の2年前には、前任の社長からは『No.2として会社を支えてほしい』と依頼されていたんだ」。

ナイガイ(東京都墨田区)の淺井康雄社長は、微笑みを見せながら当時の状況を打ち明ける。そのため自身も新社長を補佐する心づもりでいた。しかし、急転直下で「会社のトップを担ってほしい」と全く別の通告を受けたことに、しばらく戸惑いの日々を過ごしながらも、最終的には「明確な覚悟を持って引き受けた」とその時の心境を振り返る。就任直後より着手した取り組みは、就業規則と給与制度・評価体制の抜本的な見直し。時代が急速なスピードで変化を続ける中、創立100年以上の歴史の中で曖昧な形で残っていた点を洗い出し、「社員が納得する新たな枠組みを提供できた」と胸を張る。

会社の主軸となる事業は、「保温・保冷」「耐火被覆」「ダクト」という3つの工事。この中で全国に展開できているのは保温・保冷工事のみという現実と向き合い、淺井社長は「耐火被覆・ダクト工事の双方でも、各地域に拡大可能な社内体制を構築したい」と見立てを述べる。その際にネックとなるのは、「人手不足」。自社では7年前に国際サポート協同組合の支援を受け、60人の特定技能実習生を社員として迎え入れられるよう変革できたが、「当社の協力会社を見渡すと、全く対策を打てていない企業も少なくない。実習生の受け入れには初期投資が不可欠。各社の希望に応じて補助金のような形でサポートする検討も進めたい」と意向を示す。事業展開には、受注・施工体制を両輪で回す必要があるが、事業拡大の鍵はやはり「人」。人材確保と育成の循環を協力業者にも波及させようと、試行錯誤を繰り返す。近年では、新たな事業の柱として製造業にも本格参入した。国内で初めて断熱材加工のロボット化に成功しており、脱炭素で高まる断熱ニーズに応える量産体制を整備するなど、先に備えた戦略も進めている。

現在、ナイガイには毎日のようにM&Aに関する問い合わせが来ているという。今年3月には埼玉県のダクト工事会社を買収し、既に次なる打開策を模索し始めている。「建設業は景気の波を顕著に受けてしまう産業。特に当社は、土木やプラントではなく、主要部門の全てがビル内での施工となるため、現段階からあらゆる想定・準備を心掛ける必要がある」と危機感を持つ。2022年の社長就任時より様々な施策を打ち出しており、現在は社員全員に新規事業のアイデアを募るなど、社内は今までにない活気を見せている。会社が掲げるスローガンは、「会社は社員のために、社員は会社のために」。建設現場の負担軽減・省人化など、喫緊となる課題は多い。しかし、淺井社長は「時代がどのような変遷を辿っても、常に更なる高みを目指すことが経営者の使命」と決意を改めて示し、今後も柔軟かつ堅実な組織運営を目指していく。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。