処遇改善の取り組みを加速 日本型枠工事業協会・岩手支部
更新日:2025/8/5
日本型枠工事業協会・岩手支部の大坂和郎支部長は、約40年前に県内の型枠工事業者団体「岩手大友会」を立ち上げた。その後、日本型枠工事業協会より、未加入の都道府県に対してアプローチがあったことを契機に加盟。来年に岩手大友会の発足40周年を迎えることを受け、大坂支部長は「何とも言えない感慨深い気持ちがこみ上げている」と微笑みを見せる。県内の状況は概ね把握できる状況ではあった。しかし、日本型枠工事業協会に加入後は「全国各地の型枠企業と交流できるようになり、各々の取り組みを知ることで大変刺激を受け、気軽に情報交換できる仲間ができた」とターニングポイントを振り返る。

20年ほど前には、高卒人材の応募が絶えない時期もあったが、「県内における求人状況は、年々減少の一途を辿る苦しい状態にある」と本音を述べる。過酷な環境下で無理を強いられる労働。自然と高齢化が進み、体力的にも限界を迎える作業者も多いが、大坂支部長は「働き方改革とDX推進。この2点をバランス良く中小企業に浸透できれば、地方の突破口になる可能性もある」と希望を見出す。もちろん高齢の作業者にはITに対して強い抵抗を示す持つ人も多く、一筋縄で進む話ではない。しかし、このまま団体として傍観を続けていれば、現況悪化の後押しに加担することは明白だ。自身の中で具体策が出ている訳ではないが、「このままでは終われない」という使命感が大坂支部長を支えているのは間違いない。現段階でも、4週8休制度への対応や、省力化工法の研修などは重点施策に掲げている。「決して諦めている訳ではない。時代に即した応対を粘り強く進めていく」と決意する表情には、業界を背負う覚悟が滲み出ている。

近年、休暇の取得促進や労働時間に是正が見られる一方、大坂支部長は「肝心の給与水準が追いつかない現実は由々しき問題」と提起する。長年の知識と経験、高度な技術力を持ち合わせていながらも、それに見合う収入を得られていない現実が何よりも心苦しく、この一点だけでも自身が団体のトップに在任中に変革の契機を図りたいと考える。製造業など他産業と比べても、決して引けを取らない仕事という自負はある。「休みを増やすだけでなく生活にゆとりを持たせるために、担い手に選ばれるような年収の確保が目標だ」。道は険しいが、持続可能な働き方と産業構造を見据えた改革を求めていく意志は強い。「建設業は、国の根幹を支える不可欠な業種。残された時間を後世に引き継ぐ準備期間と覚悟を決め、全力を尽くしたい」と思いを述べた。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。