SNS駆使で自社の魅力を世界に拡散。日塗建が手掛ける新たな一手
更新日:2025/5/2
日塗建(三重県津市)が、TikTokやYouTube、Instagramなど、SNSを駆使した人材育成・採用を定着させている。当初は、社内での日常をアップするだけの動画だったが、徐々に社員同士の触れ合いを見せるなど、人間関係も読み取れる投稿にシフト。実習生の誕生日をサプライズで祝うTikTok動画は、国内外で大きな反響を呼び、7万件のいいね!を獲得。入社希望者の増加や、社員のモチベーション向上にも繋がっているという。


朝倉達也社長は、「コロナ以降に手探りで始めたSNSが、思わぬ形で当社の名前を世に広める結果になって嬉しい。どのような動画を上げれば話題になるかなど、法則性が皆無な部分も興味深い。会社にとってプラスになることは、今後も未体験の分野でも積極的に取り組んでいきたい」と近況の変化を語る。全てのSNS運用を担当する吉田美香常務は、「事前の打ち合わせやリハーサルを全く行わず、即決即断で撮影し始める点も、『社員の人となり』が垣間見える大きな要素と感じている。作り込み過ぎた動画を出すと、閲覧者は瞬時に見抜く。当社では、あくまで自然体の内容を配信している」と本音を話す。大企業などの社内会議や役職者の承認を経たSNS発信が、市場からは何の評価も受けず埋もれる光景は頻繁に目にする。日塗建が導き出した手法は、極めてオーソドックスなもので、世界中からのリアクションがあった現実も魅力的である。


朝倉社長と吉田常務は今年3月、昨年に入社した技能実習生2人の両親に会いにカンボジアを訪問した。「当社を信じ、大切な息子さんを預けて頂けたこと。また、貴重な戦力として会社に貢献していることに感謝の意を表すためにも、直接ご挨拶に伺うことがベストと考えた」と朝倉社長は訪問の経緯を話す。実習生の1人からは、「是非、僕の従弟も日塗建で働かせてほしい」という懇願があり、同日は無事に対面での意思確認を経て内定が決まった。技能実習生に対する差別や過重労働などが、国内でニュースになるケースもある。筆者が、なぜ技能実習生たちが文字通り生き生きと働き、リファラル採用まで獲得できたのかを聞くと、吉田常務は「『円安が進む中、日本を選んでくれてありがとう。少しでも多くの給与が渡せるよう、会社の業績アップを目指すので、信じてついてきてほしい』と心から思い、日々伝えているだけ」と即答。取材中、朝倉社長からも「社員は全員、家族と思って接している」という言葉が頻繁に出ていたことを考えると、技能実習生と良好な形で仕事を進める秘訣は、極めてシンプルな部分にあると捉えられそうだ。


「会社は、全社員のもの」と言い続けてきた朝倉社長だが、最近は漠然と「企業永続を成し遂げていくため、順調な時期にバトンを渡す準備をしなければ」と考える時間も増えてきたようだ。理想は、「創業者である私が不在でも回る組織になること」。道のりは長く険しそうだが、「日塗建に関わった全ての方に幸せが届けられるよう、今できる最善策を常に決断していきたい」と強い意志を述べ、先を見据えている。
日塗建のYouTube= https://www.youtube.com/@nittoken
日塗建のInstagram= https://www.instagram.com/nittoken/
日塗建のTikTok= https://www.tiktok.com/@nittoken41
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。