小田島組が自社特有の戦略に活路を見出す
更新日:2025/4/25
「『田舎だから仕方ない』と諦めるのでなく、これまでの常識を1つ1つ覆したい」。
小田島組(岩手県北上市)の小田島直樹社長は、2003年に2代目社長に就任した。時流に沿うことを意識し、談合からの撤退やIT化の推進など、建設業界の常識に立ち向かいながら会社を成長させてきた。「田舎」や「地方」を理由に「成長できない」や「働き口がない」などと御託を並べる昨今の風潮に対し、「DXなど最新技術を駆使すれば変化に対応できるので、それらの全ては言い訳に過ぎない。当社は、居住地などの環境に依存しない『首都圏に負けない働き方と給与の実現』を目指す」と意欲を見せている。

革新的な取り組みで業界に切り込む小田島社長だが、「就任当初は経営に関して時間を割くことが圧倒的に少なく、社員よりも協会の青年部など周囲との付き合いを優先させてしまっていた」と悔しそうに振り返る。ターニングポイントとなったのは経営の仕組みを学ぶ勉強会に参加したこと。そこで習得した経営方針や数値目標などの神髄を、1冊にまとめ上げた経営計画書を全社員に配布し、ビジョンを明確化したことが、「全社員が理念を共有し、同じ目標に向かう姿勢の確立に繋がった。これが会社を拡大する過程で最も重要なポイントとなった」と分析する。


小田島社長は、このような活動と並行して採用活動にも注力。向上心や実力を持つ女性社員が多数いる一方、出産などの理由から定着しない業界特有の傾向に注目し、社内の福利厚生の見直しや、リモートワークの導入などに着手した。若手や女性社員が働きやすい環境作りを積極的に進めたことが功を奏し、2003年に35人だった社員は、現在160人にまで増大。過半数が30歳未満、その半数が女性を占めるという飛躍的な結果を残すことができた。地方の建設業者としては極めて異端ともいえる社員構成は、小田島社長が長い期間をかけて大切にしてきた社内のコミュニケーション活性化と、社員が要望として上げた内容を的確に把握し、着実に答えてきた軌跡だと理解できる。


現在、小田島社長は事業領域の拡大を計画している。「土木工事を主軸に事業展開しているが、今後は宮城や秋田にあるグループ企業が担う塗装業や水道工事にも領域を広げていきたい。近隣県を中心に拠点を増やすことも視野に、若者や女性が地方で活躍する場を創出し、地域に更なる貢献を果たしていくことが目標だ」と抱負を語る。小田島社長が掲げる信条は、「業界と地域のファーストペンギンになること」。従来の価値観に縛られず、前人未到の領域に挑戦し続けてきた小田島組が、どのような変遷を辿りながら目的を達成していくのか。建設業界にある潜在的な革新の波が、地方都市である岩手県から生まれる可能性は高いようだ。
小田島組のInstagram:https://www.instagram.com/odashima_official/
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。