ロープアクセスを突破口に。ペイントサインマツモトが特有の光を放つ
更新日:2025/4/30
ペイントサインマツモト(さいたま市大宮区)の松本健市社長は、50歳を過ぎてからロープアクセス工法の取り組みを開始した。同工法は、高所の工事で足場を使わず、作業員がロープで吊り下がりながら工事作業を行う技術。知人の看板屋が無足で施工する会社と知った時に、「自分でもやってみたいと思った」と着手を決意。現在は、一部分の仕事をロープアクセス工法で手掛けており、看板の企画・設計・デザイン・製作・施工などを一気通貫で手掛けている。


松本社長が、祖父の創業したペイントサインマツモト(旧松本塗料店)に入社した時期が1994年。小学生の頃から父に連れられ、現場での施工を経験していた為、社長自身は新卒での入社も検討していた。しかし、母親からの「祖父・父ともに職人気質が強い為、一度、外の世界で営業経験を積んでからの入社でも遅くないのでは?」とのアドバイスに納得し、都内の広告代理店での勤務を決めた。在職中は、屋外・交通広告の営業活動に従事。3年ほど大手・中小を含めた数多くの企業と折衝できたことで、社会の構造や営業のイロハなどを習得。顧客の新規開拓や関係強化、定期的な広告掲載までの流れを身に付けた後、胸を張って家業に参画することができたという。



近年では、FacebookやX、インスタグラムなどのSNSを駆使し、新たな集客方法として導入している。「皆さん、カンバンは〜(^O^)」で始まる投稿は、看板、ロープアクセス業界を筆頭にしたフォロワーを和ませ、これまで繋がりのなかった顧客との接点を生んでいる。「地域に必要とされ、看板・塗装で皆さまに喜ばれる会社になることが私の目標。SNSはその可能性を拡張する重要なツールとして活用を続けていく」と意気込みを語る視線は常に前を向く。


松本社長は、「会社拡大を目指すのではなく、少数精鋭部隊として先鋭的な組織を組成し、看板職人としての付加価値を高めていきたい」と展望を語る。特にコストを抑えて単価が高く、顧客にも喜ばれるロープアクセスは「間違いなく突破口になる」と確信。自身が目指す「生涯・看板職人であり経営者」として現場で楽しく働き続けるため、「引き続きロープアクセスの可能性を追求する」と誰よりも熱い気持ちを前面に出す。ロープ高所作業特別教育やドローンパイロットなど、今後は取得した資格をこれまで以上に活かせるシーンも飛躍的に増えることが予想される。最近では、子供が家業に興味を示し始めるなど、会社としての明るい要素も増えているようだ。「小さくても灯台のように光を放てる看板屋・ペンキ屋になる」。明快なコンセプトを羅針盤に、今日も松本社長は新たな挑戦を続けている。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。