treesの全国展開で、良知樹園が新たな可能性を創出
更新日:2025/4/25
良知樹園(静岡県焼津市)は、庭木の里親マッチングサービス「trees」を全国展開していく方針を固めた。treesは、庭木・樹木を譲る意志のある人から、インターネットを介して新しい場所や人に繋ぐサービス。良知正浩社長は、「それぞれの歴史や思い出が詰まった銘木を破棄することなく、必要とする人に届けたいと考え事業を開始した。これを全国に広げていくことで、更なる可能性も追求していきたい」と見立てを述べ、普及促進に備える。現在も造園業を取り組む同社が、新たな挑戦を始める動機に興趣が尽きない。


今回の方針拡大において、良知社長は「フランチャイズ展開でなく、サポーター制度の導入をしていくこと」を決断。「フランチャイズに展開すると、どうしても儲け優先に偏ってしまうことを懸念した。このミッションに共鳴して頂いた企業と連携し、当社はそのお返しとして、treesから生まれた仕事を発注することで、win-winの関係を築いていく」とサービスの概要を語る。樹木の撤去が必要な各家庭では、家の解体や外構工事、売却など、様々な建設・不動産関連の需要が発生する。ここで生み出した業務をサポーターに任せる仕組みを作り上げていく。早速この取り組みに共感したスーパーゼネコンから依頼があり、自社研究所の周辺を緑化するプロジェクトを進行しており、地元の評判を呼んでいることも全国進出の後押しをしているという。良知社長は「treesの提供により、新たな選択肢の提案が可能になった。これが軌道に乗れば、造園業の閑散期に当たる冬季に、これまでにない仕事の提案できるようになる」と構想を語る。海外では松や薪などが仕立物として人気を博していることもあり、いずれは国外に輸出することも視野に入れているようだ。


20年ほど前から良知社長は、「リタイヤされた方々の生きがい・やりがいの場所を提供できれば」と「庭木の剪定教室」を開講している。現在も生徒は50人以上が在籍し、日本の四季を感じながら、樹木の生育や結実の調整、枝の剪定方法などを伝授する講義を手掛けている。「50歳を過ぎた頃から、『残りの人生は次世代のために使いたい』と強く考えるようになった。自分の活動が、地球の温度を0.01度でも下げ、造園業の底上げに繋がっていると信じ、今できる最善策を継続していきたい」と話す視線は常に前を見据える。

「シン・造園業として『循環型価値創出事業』を確立する」。造園を通じた地域貢献により、再び社会に活きる役割を与えたいと考え続けてきた良知社長。この願いは、新たな事業モデルを再構築ができた今、着実に実現に向けた歩みを進めている。緑で繋がれたバトンは次の世代に引き継がれ、その絆は更に巡り巡ることが期待される。良知社長が掲げた強い想いはSDGsにも呼応し、今後は人々の心の奥底に根付いていくはずだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。