クラフトバンク総研

ROOTSがラニーボトルで防水工事を変革

更新日:2025/4/29

防水工事を手掛けるROOTS(東京都調布市)は、今年1月に「RUNNY BOTTLE(ラニーボトル)」の販売を開始した。同製品は、汎用ノズルを先端に設置し、角度の調節を可能にすることで、吐出量を調整できる防水工事用ボトル。ボトル内に注入したウレタンやグラウトなどの量を作業者が加減し、適量を垂らすことで工事箇所の修繕・修復を実現。防水材の施工手順を根本的に変え、作業の効率化に繋げられる。

ラニーボトル開発の構想は、「10年ほど前から開始していた」と中山隆社長は振り返る。「『過度な防水材の消費を抑える具体策』や『従来のローラーやハケに代わる新しい施工方法』などを突き詰めて考え続けた結果、防水材を入れるボトル自体を変革することに辿り着いた。活用により、複雑な作業工程や特殊な技術を省略すると同時に、防水工事に携わる職人の負荷軽減もできるので、今後は普及促進に力を入れたい」と意気込みを話す。ECサイトも完備し、既に注文は全国の防水業者から舞い込んでいる。ラニーボトルの更なる広がりにより、入職希望者の増加にも期待が持てそうだ。

中山社長は、高校卒業から一貫して防水工事に携わり、多くの現場での経験を積み起業した経歴を持つ。人生のターニングポイントとなったのは、31歳の時に決意したデンバーへの語学留学。それまで会社の重鎮として、経営・現場の双方を最優先にしてきたが、自身の中で一区切りがついたことを機に敢行。語学の習得はもちろんだが、現地で様々な人種や文化が入り混じる中、自己の再認識や解放感を得られたことが「この上ない財産となった」と語る。ラニーボトルのアイデアも留学期に固まり始めたと話しており、自由な発想を獲得できたことが、後に設立する「ROOTS」の下地になっているという。

社内では、年に1回だけ不定期に「ボーナス面接」を実施する。これは、「前年度の面接から今までの期間、自分がいかに会社に貢献できたかを社員がプレゼンし、社長を納得させられたら希望した全額を支給する」という特異なシステムで好評を博している。社長自身、まだ40代前半という若さだが、既に事業承継を視野に入れており、後継者と目する有力候補の選定に入っている。最近では、自社だけでなく業界全体に「職人の育成状況を強化したい」と考えるようになり、「大規模修繕の防水工事需要はアジア圏にもあり」と見立てているようだ。

現在、新たな製品を提供する計画も立て始めた中山社長。その原動力は「防水工事が好きだからに尽きる。今後も自分のアイデアで現場の負担を最小限にする活動を続けていく」と満面の笑みを浮かべながら意欲を示す。防水工事と商品販売。二足のわらじを履き続けた先には、新たな扉が開ける可能性が高い。「防水工事の魅力は、劣化や崩壊を未然に防ぐことで、建物の生命を守り続けられること。極めてシンプルな動機だが、この信念を最優先に今後もクオリティを重視した業務を推進していく」と固い意志を示している。

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