集中管理センター開設を機に、佐伯綜合建設が中長期的な変革を始動
更新日:2025/10/8
佐伯綜合建設(岐阜県川辺町)は、来年1月に美濃加茂市で集中管理センターの運用を開始する。同社は、2023年に東海地区では初めてとなるBIMのISO認証を取得し、建設DXも推進する総合建設企業。旗振り役を務める佐伯佳優取締役は「部署や顧客、地域を繋ぐ新たな拠点として機能させ、建設業の可能性を拡張する施設になることを期待している」と思いを述べる。

今回のセンター建設は、佐伯敏充社長の「社員を集結させ、営業と設計、施工部門で分散している技術・知見を組織横断的に継承する」という方針に基づき決定した。組成したプロジェクトチームでは「シームレスな空間、地域に開かれた企業」をテーマに設計・施工に取り組み、2、3階に各部署を集約。3階には現場遠隔管理の専用エリアを設置することで、相乗効果による新たな技術革新にも期待を込めている。1階のホールは市民の利用も視野に開放することも予定しており、「まだ構想段階だが、美濃加茂市とも共同でイベントを開くなど、枠に固執しない使い方を打ち出したい」と模索する様子も見せている。
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佐伯取締役は、5年前に異業種から同社に参画した。入職当初から「ムラ社会のような閉鎖的な状況を打破しなければ未来はない」と胸に誓っており、現在は「日本一楽しい会社に!」を理念に採用にも携わる。自身を突き動かす原動力は、「建設業に関わる者としてのプライドと危機感」。入社から数年で10億円弱の現場所長を任されるなど、強烈なプレッシャーの中でも確実に実績を蓄積。建築施工管理技士として完工した時の達成感は、何事にも代えがたく「今はこのようなスタンスを若手にも伝えていきたい」と意気込みを見せる。限界まで迫り来る担い手不足に対しては、トップダウンの傾向が強かった社風を変え、研修制度の構築や福利厚生を拡充するなど、独自手法での改善を進めている。このような継続により、チャレンジを許容する文化が根付き、「新入社員には勤務中に資格勉強をしながら、各々が心地良く働ける環境を意識している」と採用・育成面でも確かな手応えを感じられているようだ。


一連の取り組みを踏まえ、中長期的な目標を聞くと「AIに対する可能性の追求、地方建設業のイメージ刷新、当社の企業城下町としての確立―の3つだ」と即答する。「個人的な思い込みの可能性もあるが、我々ブルーカラーは常に後ろ指を差されてきた印象がある。今後の業務はこのような歴史を壊し、10年後には建設業が誇りある仕事として認知されるよう、あらゆる手段を尽くしていく方針だ」と並々ならぬ意気込みを全面に出す。常に先に向ける視線はぶれることがなく、その一挙手一投足は周囲をプラスの方向に巻き込む力がある。来年1月の集中管理センターの開設を機に、佐伯綜合建設がどのような変革を業界にもたらすのか。その過程に希望を抱くのは筆者だけではないはずだ。


佐伯綜合建設のInstagram:https://www.instagram.com/saekisaiyo/
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。