ドローン測量を突破口に。酒井組が地域を強化する独自戦略を展開
更新日:2025/6/5
土木工事を主体とする酒井組(青梅市)は昨年、測量を行う子会社を立ち上げた。ドローン搭載型のLiDARや、3Dスキャナーなどを完備し、創設初年度に青梅市と測量に関する契約を締結。既に山岳地の測量を実施しており、着実に実績を積み上げ始めている。

須田晶子社長は、「社長就任時、父である会長から『土木だけで生き残れる時代ではなくなった。何か新たな突破口を見つけるように』と言われたことを熟慮し、測量部の新設を決めた。既に測量の実績があると言われるが、これは創業129年という歴史があったからこそと捉えている。当社には、まだ他社が取り揃えていない最新のドローンがあるので、この強みを活かしていきたい」と意気込みを語る。今期からは、年俸制を導入し、人事評価制度を大幅に変えるなど、社員に利益目標額の設定と、それを実施するため具体策を認識させるようになった。2024年問題も見据えた改変だったが、徐々に社員の意識も前向きに変化し始め、能動的に行動するケースが増えているという。6月には、より若手が働きやすい環境にしていくため、パワハラ・セクハラの対応窓口を設置。その理由を聞くと、「1つの物事に対して誰がどのように感じるか、その都度対話できる状態を整えなければ、組織として継続的な改善を示せないと感じたから」と本音を話す。近々には、コミュニケーション研修も開催予定であり、須田社長の組織運営のテーマが「相互理解」にあることが見て取れる。8月からは初となる女性技術者が入社しており、須田社長は「どのような工夫を凝らせば女性社員が増えるのか?」と自問自答する時間も増えてきたようだ。

今年3月からは、「会社としての母体は建設業であり土木だが、大手企業に負けない唯一無二の価値を持ちたい」と、東京都が推進する「TOKYOエシカルアクションプロジェクト」に建設事業者で初めて参画した。地域の活性化や雇用、環境に配慮するエシカル消費に繋がる活動を通じて、これまでは廃材として捨てられていた、大理石やガラス板の1部を日用品に昇華することを実現している。地域密着の強化には特に力を入れていて、社長自らが発起人となり、地元の二俣尾3丁目自治会と連携したマルシェを毎月開催。地元に住む子供たちの未来を考え、酒井組から建設機械に触れる機会などを提供することで、地域の活性化にも貢献していることも特徴の1つである。


「当面は、測量分野において西多摩地区で抜きん出た存在になり、『酒井組』と聞けば23区でも認知されるよう、良い仕事を続けていきたい。弊社が保有するLiDARを活用すれば、災害時に人手が少なくても周辺の詳細な地形が容易に把握できるなど、まだ青梅市に協力できる要素は多く残っている。今後もエシカル活動やマルシェ開催なども含め、中小企業だからこその付加価値を継続的に提案できるよう、果敢な挑戦に取り組みたい」。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。