三和電業が経営理念の浸透に重点を置く
更新日:2025/4/26
三和電業(香川県高松市)は、7月から始まった今期の方針に「Quick Action!Quick Growth! Quick Return!」を掲げた。山地 一慶社長は、「創業以来、総合設備エンジニアリングとして、重視してきた項目が『技術』と『品質』。この機会に原点回帰し、成長を前提にした積極的な行動を起こしていこうと、この施策に決めた」と経緯を話す。「当社のような中小企業が大企業の真似をしても、早々に行き詰りを見せるのは明白だ。常に時代に見合った適格でQuickな経営判断を心掛けたい」と明確なビジョンを示している。

2018年の社長就任時から、山地社長が注力してきたことが「経営理念の浸透」。創業者と先代が1981年に発表した、この経営理念には「何のために会社を経営している?」との問いに対する回答も含まれており、「お客様を大切にしたいのなら、まずは社員の満足度を優先すること」という本質が刻まれている。この理念を基に山地社長は、新人教育の充実化も進め、グループ内で連携できる仕組みを構築。入社直後でも新入社員が成長できる環境を整えることを意識し続けている。

経営理念の浸透を強化したきっかけは、「入社4年目で勤務した中国での体験にある」と語る。慣れない商環境・文化の違いにより自暴自棄になり始めていた状況を、見かねた上司から手渡された会社の「フィロソフィ手帳」。経営理念をベースにした行動指針が記されており、そこには「逃げるな青年!不都合も愉しもう!」という一節が記載。当時の上手くいかない状況を他人のせいにしていた自分を見透かされたようで「ふがいない自分自身を一言で言い当てられ、涙が止まらなかった」と振り返る。初めて現場で共に汗を流す仲間の大切さに意識を向けられたことで、任されていた中国でのプロジェクトも無事に完遂。帰国後は、本格的に経営企画などに携わり、社内に人事課を創設することで、現場を経験しなければ対応できない社内改革に着手したという。


三和電業は昨年6月、県内で共に切磋琢磨してきた久保電機(香川県観音寺市)をM&Aした。「ずっと三和さんの経営を目指してきた。この機会に是非ともグループ入りを叶えたい」と久保電機・前社長の懇願により実現したM&A。久保電機の新社長には、山地社長の同期である中川晃良社長が就任し、社内の変革を成し遂げる日々を送る。両者は入社当初から目立った活躍を見せてきた共通点もあり、会話をせずとも良い影響を与え合う理想的な関係性を築けているようだ。

山地社長は、「売り上げ・利益は、最後についてくるもの。素晴らしい社員を数多く育てられる会社なら、絶対に潰れないと確信できたから、経営理念の浸透に重きを置けた」と思いを述べる。最近では、社員が知り合いを連れて入社に至るリファラル(縁故)採用が増加しており、社内の若返りと活性化を同時並行で果たすことに繋がっている。残業規制への対応や女性活躍なども他社より推進度は高い。しかし、「まだ目標達成には程遠い。課題は尽きない」と現況を分析する表情は明るく、常に前を向く姿勢が印象的だ。「社員みんなが元気で立派に」。創業者から引き継がれてきた三和電業のDNAが、近々に何らかの形で花開くことは間違いなさそうだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。