建築のIT化を加速へ。三友建設が経営改革に着手
更新日:2025/5/2
三友建設(東京都八王子市)は、社内の「IT化」、「人材育成」、「様々な働き方」の3つを柱とした経営改革に着手する方針を発表した。特に注力する部門が、「建築のIT化」。この取り組みを加速化するため、子会社である三友ATN(東京都八王子市)を立ち上げ、BIMを主軸としたDX化を推進している。外池正明社長は、「20~30年先を見据えると『早急にDX化を進めなければ、それが致命傷になる』という危機感から改革を決意した」と率直に語る。既に自社HPには請求書をダウンロードできる仕組みを構築しており、協力会社は日常的に活用しているという。

外池正明社長は、設計事務所で働きながら一級建築士の資格を取得後、父が創業した「三友建設」に入社した。現場作業員としてゼロから経験を積んだ後、44歳で社長に就任したが、間もなくしてリーマンショックが発生。売り上げは半分以下に落ち込み、資金ショート寸前の状況で、「仕事がないなら自分で作る」と、自社が保有する資材置き場に賃貸マンションの建設を決断。これを機に収益物件としての不動産運用を開始し、見事に急場を凌ぎ切った経験を持つ。この体験以降、三友建設では自社物件内の現場で、新たな技術・工法をトライ&エラーすることが習慣化し、今回の経営改革でも「制約のない自由な環境下で、当社にとって何が最適なサービスかを見極めていく」と意気込みを語る。検討内容の詳細については、アプリと連携した業務のフロントローディング化や、図面だけでは理解できない箇所の見える化、生産性向上に直結するデータ活用などを列挙。外池社長は、「今後、様々な技術を取り入れていく予定だが、最も重要なポイントは、いかにITを現場に実装し定着できるか。この検証を細かく実施するには、やはり自社で企画・施工するプロジェクトでなければ難しいと判断した」と現況を語る。コロナ以降、DX化には取り組んだが、手間だけがかかって使いこなせず放置し、半年後に新たな製品を購入しても、結局使わないままアナログに戻ることを繰り返す企業は多かった。このような経緯を熟知しているからこそ、外池社長は「じっくりと落ち着いた状況で、何が最適かを吟味する」と表明しており、最終的にどのような結論を導き出すのか興味深いところだ。


「先行きの不透明な時代に突入したが、『パートナーとの信頼関係』と、『八王子を中心とした地域との密着』という方針は、今後も間違いなく継続していく。近年では、TwitterやInstagramなどのSNSを充実させたことにより、弊社ホームページの訪問者数が増加するなど、これまでにない可能性も見え始めている。当社が創業から70年近く培ったノウハウに、『人・経験・技術』の価値観を加えることで、新たな突破口が見出せると信じ、今後もあらゆる可能性を模索し続けたい」と展望を述べた。


三友建設のTwitter= https://twitter.com/sanyu_kensetsu
三友建設のInstagram= https://www.instagram.com/sanyukensetsu_hachioji/
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。