徹底した女性サポートの職場づくりに挑戦 佐藤電機
更新日:2025/6/5
佐藤電機(大阪府東大阪市)の佐藤賢治社長は、社内に公正な評価制度を導入する方針を固めた。これまで明確な基準を設けなくても、創業から65年の経験・知識を基にした組織運営ができていた。しかし、企業永続に観点を置くと「現段階で明瞭かつ公平な評価が下せる体制を構築し、安心感のある職場を社員に提供したいと考えた」と決断までの過程を語る。同時期には、企業理念も作成した。今回の改革を機に、社内外でどのような変化を生み出せられるか興味深い。

佐藤社長は、建設会社で5年半ほど営業に従事した後、実の父が創業した佐藤電機に入社した。時は1990年のバブル期。前例踏襲のみでも業績が上がる状態に危機感を抱き、新規の販路を広げるために奔走するも、社内では「2代目のドラ息子が何か始めたぞ」と嫌味を言われ、苦々しい思いをしたことも多数あった。しかし、バブル崩壊を契機に、自身の見通しが間違いでなかったことを徐々に証明。その後、ITバブルやリーマンショック、コロナ禍など、数々のピンチを苦しみながらも乗り切った事実が、現実から逃げないスタイルの確立に繋がり、「現在まで何とか事業を存続できている」と振り返る。

現在は、女性技術者を含めた社員育成に力を入れている。今年4月からは「社員には長く働いてほしい」と、様々な状況に適応できる「ケア休暇」も導入し、直行直帰やZOOMの活用も推奨する。特にシングルマザーを支援したい意向が強く、現在は近隣の保育園とも連携。いずれは、事業所内や周辺施設に企業主導型保育所を設置することも真剣に検討するほど、今後の重点ポイントと見定めているようだ。現在も人手不足を理由に、依頼が来た仕事を断らざるを得ないケースは多い。この対策として佐藤社長は、女性やシングルマザーに着目した。「建設業は資格社会。数多くの制約がある中で生活する女性に対して、資格取得の前段階からサポートできる仕組みを作り、長期的な視野を持ちながら働ける環境を早期に整備する」と語る眼には熱いものが帯びている。


「電気工事は、建物に命を吹き込む仕事。設計・積算を手掛けられる部隊が存在する強みも活かし、今後も社員の能力を最大限まで引き出せる会社を作る」と展望を述べる。昨年、佐藤社長が60歳で始めたXのフォロワー数は、年内にも3000人に達する勢いである。新たな挑戦を今なお続ける姿勢は、全社員にも伝播しており、この良き影響力がどのような形で結実するか注目である。
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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。