渋谷区建設業協会が防災協定のバージョンアップを加速
更新日:2025/5/2
今年5月に開催した渋谷区建設業協会の通常総会で、松田康一会長(松田建設工業)の続投が決まった。2期目を迎えた松田会長は、「当面は、副会長就任時から進めてきた、防災協定のバージョンアップの加速を目指す」と意欲を見せる。渋谷区には同協会の他、管工事防災協力会、災害電設協力会、造園建設業防災協力会、運動施設協力会、塗装安全協力会で構成する渋谷区建設六団体連絡協議会も存在しており、災害だけでなく台風による倒木や大雪時の除雪が起きた時でも各協会が綿密な連携を見せている。



4年前には、協会と渋谷区が積極的に協調し、震度5強の地震が発生した場合、区からの出動要請がなくても、会員の判断で救助にできるよう防災協定を改定した。1月に発生した能登半島地震で救援に向かった会員に対しても、年間契約の単価を適用するなど、他にはない柔軟性を見せている。近年では、緊急時に何かあればLINEワークスを活用し、全会員に連絡が一斉に行き届くシステムを導入。スマートフォンに馴染みのないメンバーを考慮し、通信の練習をする説明会や報告会の場を設けるなど、各自の状況を配慮することも忘れない。「人間関係のベースとDXツールがあり、訓練を経て金銭面も保証する。渋谷区との協調があってこそ実現できる一気通貫であり、引き続き区民のための改善を繰り返していきたい」と先行きを述べる。渋谷区では自社で資材置き場を持つ企業が少ない為、緊急災害時には区が保有する土地を活用しなければ、全体の対応をし切れないなど課題も残る。このような現実に対しても松田会長は、「この難題を実際に災害が起こる前に克服してみせる」と明確な意思を示している。渋谷区民を守る為に、建設企業が常に行政と協力して万が一に備える。生まれ育った地元に愛着があるからこそ、細部にまでこだわる松田会長特有の感覚であり、それが会員にも浸透している点が特異的である。



今年度から20年間に渡り、区内の小・中学校20校で老朽化に備えた大規模な建て替え工事が始まる。1校当たりに掛かる費用は数十億円規模を想定しており、監理会社も関わるビッグプロジェクトとなる方針だ。松田会長は「渋谷区民であり将来を担う大切な生徒を守るための重大な任務。協会としても区と団結して、この重要事案に取り掛かる」と覚悟を見せる。災害時だけでなく、常に最前線で体を張り続ける建設企業の存在意義を示せる絶好の機会に活かせるか注目である。

「今後も渋谷区とはこれまで通りの良好な関係を維持し、地道な活動を継続しながらも、予期せぬ事態に備えるという協会の使命を全うする。我々は縁の下の力持ち。協会特有のダイナミックさも身に付けられるよう、新たな取り組みに挑戦していきたい」と展望を語る。最近では、現場を偶然見学した観光客のアップしたSNSが、人伝手に評判を呼び、想像以上の反響に繋がった現実もあったようだ。新たな希望の芽は日に日に増えている。松田会長は、「安全面も徹底する日本品質の施工技術が、世界に更なる拡がりを見せられるよう、日々の業務に徹していく」と語り、渋谷区の安全・安心のために全力を尽くすことを誓った。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。