地域活性化に向け自社から働き方改革を推進
更新日:2025/4/25
来年に創業120周年を迎える清水組(秋田県男鹿市)は、29歳以下の若手社員が全体の約2割を占めるなど、人材育成・確保に重点を置いている。極端にベテラン社員が多かった社内体制を懸念し、近年では9年連続で新規学卒者の採用を実現。2015年頃から注力した改革が功を奏し、当時40人程度だった社員を現在の70人まで増員することができた。2022年度は東北地方で唯一、建設人材育成優良企業にも選出されるなど、時代に合った総合建設業として存在感を発揮している。

清水隆成社長が建設業界に入ったのは2001年。公共工事への投資が減少していく中、家庭よりも仕事が最優先という時代。受注工事の工期を厳守するために、「子どもが目を覚ます前に現場へ向かい、子どもが寝てから帰宅するのが当たり前の時代だった」と回顧する。その後、始まったPTA活動では、「授業参観やイベントに父親が参加していることに驚いた」と建設業界とは異なる、新しい時代の変化を感じ取っていた。

転換点となったのは、清水社長が前職で勤務した企業の元上司から貰った「結婚して秋田に引っ越していく1級土木施工管理技士の女性がいる」という一本の電話。「縁あって採用した女性社員を契機に、採用の幅が広がった」と当時の状況を語る。この変化をきっかけに、長時間労働や休日の在り方、教育体制などを見直し、女性が働ける環境を整備。同時期に秋田県が秋田県建設産業担い手確保育成センターの創設や、完全週休2日制モデル工事などを発注し始めたことも追い風となった。相乗効果により、新卒・中途に関わらず会社への問い合わせは増加したという。ここ数年は、技術者の負担軽減を目的に設置した建設ディレクターなどの取り組みも奏功し、新たな好循環を生み出すことに成功している。


清水社長は、秋田県建設青年協議会や東北建設業青年会の会長を歴任し、現在は秋田県PTA連合会の会長など、県内の重鎮となる複数の役職を務めている。これだけ精力的に地元に尽くす動機の大部分は「地元の秋田県を含めた東北が、更に活性化する状況を作り続けたいから」。就職セミナーでは自らブースに立ち、学生に経営者としての本音を伝えることを常に意識。オファーがあれば学校やイベントでの講演なども積極的に受け入れる。SNSで頻繁に情報発信する姿勢からも分かる通り、常にあらゆる物事のアップデートを心掛け、来るもの拒まずの精神で新しい人材を引き付けている。「『施工監理職が、真っ当な暮らしを送る』を現実に提供する。朝食と夕食を一家団欒で過ごせる社員を増やしたい」を明確な目標に掲げる清水社長。今後も日を追うごとに各家庭で楽しく談笑する清水組の社員が増えていく風景を容易に想像ができるのは、筆者だけではないはずだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。