復興支援への取り組みを強化へ。伸栄工業が若手と共に目指す先とは
更新日:2025/4/25
伸栄工業(石川県白山市)は、2022年・2023年で過去最高の売り上げを更新している。2017年に3代目の社長に就任以降、平本浩一社長はコロナ禍の混乱もあり、会社を縮小するか悩む日々も多かった。しかし、社内で情報や方向性を共有し、社員と会社が共に成長することを決めたことで、「社内の空気も以前より飛躍的に向上し、ようやく地に足を付けて歩むことができた」と振り返る。近年では、常日頃から最先端の情報収集を欠かさず行ってきた効果もあり、「事務員に頼り切ってきたバックオフィス業務も順調にDX化でき、業務の生産性向上を実現している」と語っている。

2024年の元旦に石川県で能登半島地震が発生し、多くの取引先や社員が被災し甚大な被害を受けている。伸栄工業は、断熱・耐火被覆工事を主力事業としているが「従来の業種に付加価値を高めながら、石川の復興支援に向けた取り組みを開始する」と覚悟を決めた。最近では「地球温暖化対策やクリーンエネルギー、環境保護などの需要が増えており、今後はこの点を特に注視して、より柔軟な決断を心掛けていく」と施策を語る。これまでの建設業界では、1つの業種を極める専属職人が通常の在り方だったが、若手社員は新分野にも果敢にチャレンジし多能工としての活躍を見せ始めた。この現状を受け、平本社長は「社員のスキルを少しずつでも広げられるよう、チャレンジの機会を増やす環境整備を考えるようになった」と心境の変化を話す。社員の平均年齢は33歳。伸び代が多い分、成長に時間を要することも想定し、1人1人とじっくり向き合う姿勢を重視。新卒優先だった採用状況を、数年前からは中途・リファラル採用にも力を入れるようになり、組織内でジェネレーションギャップを生まない体制作りにも配慮する。終業時間を現場状況に合わせるなど融通を利かせたことで、メリハリの利いた自由な休暇が取れるようになり、若手社員が心地良く働くモチベーション管理にも工夫を凝らしているようだ。


伸栄工業は、専門工事会社として得意分野を極め、将来は徐々に自社エリアを拡大していくことを目標に設定した。長年、北陸エリアで様々な顧客との信頼関係を培ってきた強みや、地場に根差した経験と人間力を武器に、平本社長は「雇用や担当エリアを広げつつ、建設業界の魅力づくりに貢献していきたい」と考える。現在、平本社長は44歳。心身ともにエネルギーに溢れる状態を維持しており、若手社員が周囲で下支えする組織も出来上がりつつある。現在の体制強化を完遂し、更なる飛躍が遂げられるようになるのか。「変化を楽しみながら成長していきたい」と意気込みを見せる、平本社長が率いる伸栄工業の躍進から目が離せない。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。