クラフトバンク総研

ロープアクセス導入を転換期に。高橋塗装が新領域を開拓へ  

更新日:2025/5/2

高橋塗装(大分県大分市)が今年1月に創業20周年を迎えた。職人の働きやすさを追求するため、ロープアクセス工法の導入や技術開発などを積極的に推進。創業から積み重ねた施工実績は1000件以上となり、地元の大分市を中心に屋根・外壁塗装一筋で安定した生活空間を提供している。

高橋道成社長は、「塗装や防水工事を主軸に事業を展開してきたが、競合他社と差別化を図るため、金額を下げる以外の方法を模索していた」と当時を振り返る。様々な情報収集を行う中で、塗装とロープアクセスの掛け合わせを思い付き、ロープアクセス工法への参入を決断した。導入に当たっては、付き合いの長い協力会社や職人の年齢上昇なども勘案しており、酷暑での作業による負担が増大していたこと。また、スキルが向上しても賃金が極めて上がりにくい建設業界の現状も考慮した上での判断だったという。「近年の温暖化の影響で、特に夏場の外作業が厳しいと感じる職人が増えていた。体調を崩すケースや『来年は続けられない』との声も上がり、現状を改善したいという思いから、社員と共に徹底した研修・訓練を受けることで、ロープアクセスの技術習得に努めた」と経緯を話す。

新たな工法に取り組むことは、社員にスムーズには浸透せず、「高所には慣れているが、大半がロープで吊るされる恐怖を感じ反発を受けた」と当初の状況を語る。しかし、1~2年を掛けて「体力的にも負担は軽減されるし、スキルアップができれば給料は今よりも上がる」と説得すると、徐々に社内の雰囲気は良くなり、受け入れる状況に変化したようだ。当時、大分県にロープアクセス工法を駆使できる業者は皆無で、競合不在の独占状態だったことが強みとなった。当初は、認知度が低い故に危険だと決めつけられるケースも多く、開始から3年ほどは売り上げが上がらない状態が続いた。しかし、地道な営業と丁寧な施工を諦めず続けた結果、約2年前から受注が順調に増えていき、「現在では会社の売上の大半をロープアクセス工事が占めるよう現実を変えることができた」と胸を張る姿が印象的である。

「建設業は、自分が造ったものが後世にも残り、それが地域の方の生活にも直結することが魅力」と感慨深げに語る。最近では、「マンションなどの建物の劣化状況の調査を、高所に登って現地確認するなどアナログな体制」と自社でソフトウェアの開発を始め、2月には共同研究する大学と実証実験を行うようだ。常に今までにない選択肢を模索し、最新技術も取り組むことで現状を打破してきた高橋社長。会社の理念でもある「次世代に幸せを塗り重ねる」事業展開は現在も続いている。筆者は、このような取り組みから少しずつ小さな輪が広がり、業界のアップデートに火が付く可能性は高いと考えている。

新着記事

  • 2025.07.29

    上場を追い風に、トヨコ―が更なる飛躍を誓う

    今年3月28日にトヨコ―(静岡県富士市)が、東京証券取引所グロース市場に上場を果たした。新たなイノベーションの浸透は難しく、会社の信頼度は社歴や年商で計る傾向のある建設業界。旧態依然とした閉塞感を打破するには、「IPOを […]
    クラフトバンク総研記者松本雄一
  • 2025.07.25

    新会長就任を機に「未来に続く道を創る」 全国道路標識・標示業協会中部支部静岡県協会

    今年4月、全国道路標識・標示業協会中部支部静岡県協会の会長に海野景司氏(中部ロードテック・代表取締役)が就任した。22~24年度に同協会で実施した静岡県内の区画線剥離状況をAIで把握・数値化する調査が高く評価されたことを […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.07.23

    巧拓が日本足場会を基軸にした成長を誓う

    巧拓(山形県東根市)の荒井幸俊社長は、昨年の夏に日本足場会の理事に就任した。同会は、2022年に立ち上げられた足場施工を主体とする専門工事団体。現在の会員数は64社まで増加しており、会員企業が取り組む先進的な事例を学ぶ機 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.07.18

    サンダイ技建がSDGsの理念に基づいた活動を加速

    サンダイ技建(愛知県小牧市)が、今年7月で設立25周年を迎えた。加藤鐘三社長が、「地元が好き。だからこそ皆が安心して住めるまちを創造したい」と強い気持ちを込め立ち上げた同社。「交通安全事業に特化したプロフェッショナル集団 […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇