社員教育の重視で新たな勝負に挑む 武壱工業
更新日:2025/9/4
足場・鳶工事などに携わる武壱工業(山口県下関市)は、社員教育に重きを置く方針を発表した。伊藤武士社長が、スローガンに掲げたのは「日本の未来に貢献する人材育成」。これまで短期間での社員育成を試みたことはあった。しかし、今回は「鳶職人としてだけでなく、一社会人としても当社に所属できれば、どこに出ても通用する仕組み化に挑みたい」と意気込みを述べる。会社設立から15年が経過し、同社はこれまでにない社内の体制強化を目指している。


社内では、既に社員研修を年間で数回ほど実施している。内容は技術力の向上ではなく、「主に意識改革を促すプログラムになっている」と趣旨を話す。同じ環境・メンバーのみで完結するようではマンネリ化に陥る危険性があると、講師は外部から招聘。「新しい風を吹かせる意味でも、第三者の目線も含めた指導が必要だと考えた」と経緯を語る。目標の設定から達成に向けたチーム組成、動き方の詳細を学ぶ機会として機能する。実際に受講した社員からも「普段聞けない話を聞けた」「考えるきっかけを持てるようになった」との声が上がりモチベーション向上に繋がっているようだ。


伊藤社長は「入職以来、高所での作業を続けてきたが、常に高い安全意識と、質の高い無事故の施工を徹底してきた」と振り返る。独立後は、一人親方として山口県内の様々な現場で経験を積むことで、徐々に顧客との信頼を構築し人脈を拡大。27歳の頃に80人もの作業員を抱えるようになった時点で「法人化の時が来たと悟った」と当時の状況を話す。労働者の安全と健康を最優先に考え、ISO 45001の認証も取得した。現在は、主軸としている仮設足場の他、アスベスト除去や機械器具設置などにも着手。足場工事のプロフェッショナルが、石綿除去と足場組立を一体化させることで、圧倒的な低コスト化を実現するなど、他社にはない形で顧客最優先を志向している。


当面の目標を伊藤社長は「地元下関から全国各地の現場に対応できる足場工事業者に成長すること」と宣言する。会社の事業としては、資材のリースや販売も手掛けており、将来的には足場工事の関連業務を一貫して担う、グループ企業の運営も目論む。昨年9月には、その第一歩として、第二機材センターを開設した。新たな領域での勝負を開始する時期も近そうだ。「当社は、足場を主体に可能性の拡張に挑戦する企業。今後も社業を通じて、社会貢献に継続的に取り組めるよう全力を尽くしていく」と熱い気持ちを述べた。

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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。