解体現場の打開策に。鳶浩工業が「ケージシステム」の提供を加速化
更新日:2025/5/2

鳶浩工業(埼玉県三郷市)が4月、日本セイフティー(東京都千代田区)と業務提携を結んだ。全国にある地場ゼネコンなどと強固な関係を築く日本セイフティーとタッグを組むことにより、鳶浩工業の開発した「Cage System(ケージシステム)」の更なる普及促進を手掛けていく。ケージシステムは、アルミトラスの骨組みを足場に取り付け、ネットで現場全体を覆うことで、解体工事中の飛散事故を防止する独自工法。トラス構造で足場の強度を保ち、盛り替え工事を短時間で行えるため、大幅な工期短縮を可能にする。今年1月から提供を開始し、現在までに150件以上の問い合わせに応えているという。
小林浩二社長は、21歳で建設業に入職してから3ヶ月で職長に昇格した経験を持つ。1人親方として経験を積んだ後の2013年4月に「鳶浩工業」を設立した。当初は、主に鳶や解体などの工事を担っていた。しかし、7年ほど前よりケージシステムの基になる構想を開始。空想の段階から開発に着手し、現場でのトライ&エラーを経て販売開始に至った。足場さえあれば簡単に設置でき、重機を止めることなく、悪天候でもカーテンのように養生材を外せるなどメリットは多い。
「現在は、ケージシステムを活用すると、足場の強化も実現できるという化学的な裏付けと根拠の明確化を進めている。流体・フレーム解析や建材各々の調査など膨大な時間を要するが、これが立証されればケージシステムを使わない理由はないと証明できる」と小林社長は先を見据える。会社の事業は、ケージシステムの開発・提供のみに変更した。既にスーパーゼネコン5社の全てが導入しており、2年前から申請しているNETIS(新技術情報提供システム)の登録も近そうだ。
IT化による様々な技術の発達で建設業界は、安全・工程・原価・工法などの事前検討が正確にできるようになった。しかし、実際は「3Dのみに限っても、ほぼ現場レベルには落とし込めていないのが現状だ」と小林社長は考える。このようなギャップを少しでも埋めていくため、鳶浩工業は全現場の3次元化を目指しており、受託した半分以上の案件で完全3D化を実施。3Dで提出した図面に対して「2D化したものも送付してほしい」と希望する顧客も想像以上に多く、双方の作成には2倍以上の労力を要することになっている。骨の折れる作業になるが、「生産性が落ちても、この現場からの声に耳を塞いだら日本の建設業界の改革は進まない」と採算度外視の徹底した現場第一主義で対応を進めているという。
「当面は解体工事の際に、ケージシステムが当たり前に使われるよう事業を展開していく。『ケージシステム=安全・迅速・低価格』という現実が定着すれば、現場の工期遅延や待機損料の心配がなくなり、オペレーターは快適に作業できる。これらの実現が業界全体の変革に繋がると信じている」と今後の展望を語る。新技術の創造・採用により、安全の追求と公衆衛生を考えた次世代の解体を目指す。気の遠くなるような過程だが、このシンプルかつオーソドックスの戦略が近い将来の打開策になるはずだ。
株式会社 鳶浩工業の会社情報
ケージシステムのオフィシャルサイト
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。