クラフトバンク総研

地域社会の安定に向けた模索を継続 栃木県アスファルト合材協会

更新日:2025/4/10

 栃木県アスファルト合材協会の磯部尚士会長が、来年5月に5期目の任期を終える。これまで明確なルールではないが、「会長は、最低でも5期・10年の期間を全うすること」という不文律を意識してきており、「その後の予定はまだ決めていないが、今は任期終了まで全力を尽くすことだけを考えている」と意欲を見せる。最優先事項は、「現状維持に努めること」。先行きが不透明な時代に突入しているが、今ある状態を保つための暗中模索は続きそうだ。

 川上清副会長は、「栃木県でのアスファルト合材の年間出荷量は、90年代の150万㌧をピークに年々減り続け、現在は約70万㌧で終始しているのが現実。最盛期に戻すことは難しいが、実績に基づき地域に根差した企業の雇用が守れるよう、出荷量の増加に向けた活動をする」と固い意志を示す。栃木県の地場ゼネコンでプラントを所有する企業は6社ほどに減少している。他県と違い大手企業とのJVは組まない方式を採用してきたが、磯部会長は「このままだとJVを取り入れざるを得ない状態になる」と現状を語る。外的要因による資材高騰など厳しい状況下での事業継続は、赤字覚悟を強いられる。自社だけで設備投資を実施するにも莫大な費用が掛かる。「万が一の発生時に備えたい」との協会の思いと現実には乖離があり、その板挟みに苦しまされているようだ。

 協会では現在、国が示す指針に従いCO2排出量削減の取り組みへの着手も検討する。具体的には、アスファルト合材の製造温度を低減するなど、低炭素から脱炭素社会への挑戦を検討しており、製造に必要な燃料消費量の削減による「低炭素アスファルト舗装」の実現にも備えている。磯部社長は、「環境と共生するアスファルト合材工場の構築にも注力し、多様化・高度化する要請を果たす準備も進めたい」と意気込みを見せる。最近では、「人工的にでも単価を上げるには、生コン業界と同様にプラント数を削減し、供給量を下げていくしか方法はないとも感じている。心苦しい点は多いが、理想と現実の間にある中庸点を探しながらの団体運営を心掛けたい」と実感を込めて語る。協会設立の目的は、各社の技術力を向上することで地域の安全・安心を確保すること。会員増加は極めて難しい状況だが、制限がある中でも協会は今も改善案を探している。

 現在、栃木県のプラントは全体的にメンテナンスが必要な時期を迎えており、川上副会長は「リニューアルを実施すべきか、畳むべきかを決断する時期が近づいている」と想定する。設備投資を含め高い技術とコストが掛かることからも、「他県と同様に大手との連携も選択肢に入れる必要もあり、この数年は協会としてのターニングポイントを迎える可能性が高い」と見立てている。昨今、各地で起こり始めた悲惨な事故が顕在化した通り、万全なインフラを整備するには、相応の準備が必須であり、この部分だけは疎かにすべきではないことは明白だ。国民の生命・財産を守るため、国を含めた各行政はどのような判断を下すべきか。栃木県アスファルト合材協会は、今後も地域社会の安定に向けた活動を継続していく方針である。

関連記事:建設業界トレンド 『栃木県舗装協会などが新年賀詞交歓会』

新着記事

  • 2025.06.04

    技術継承の橋渡し役を担う 日本多能工協会

     2023年8月4日に日本多能工協会が設立された。代表理事を務める人物は、結城伸太郎氏(ゆうき総業・代表取締役)。20歳の時に刷毛一本で独立し、職人不足の中でも若手育成に励み、地道な活動を経て現在地に辿り着いた経緯がある […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.05.30

    久志本組が200年企業に向けた取り組みをスタート

     久志本組(三重県四日市市)の清水良保社長は、日頃から社員に「地域の方から頼られた時に『嬉しい』と素朴に感じられる人であってほしい」と伝えている。会社は、創業から120年以上の歴史を四日市市に刻み続けてきた。シンプルでオ […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2025.05.27

    ショールーム開設のハマニ。左官技術の伝承に全力を尽くす

    「とにかく職人の採用・育成の改革が急務だと感じた」。  左官・土木工事を手掛けるハマニ(静岡県浜松市)の河合滋社長は、慣習として続けてきた「見て学ぶ」「技術を盗んで覚える」という従来の職人文化に限界を感じ、体制の移行を決 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.05.23

    「誰かの笑顔のために」、三瓶工業がDX駆使で新たなステージへ

     ㈱三瓶工業(山形県天童市)は2022年、設立50周年を記念して会社のロゴや制服、ヘルメットなどのデザインを刷新した。アイデア作りからデザイン製作までを一括で依頼した先は東北芸術工科大学。地元の芸大生との連携により、これ […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦