旧来のイメージ脱却に全力を尽くす とちけん小町魅力向上委員会
更新日:2025/5/2
2024年8月、「とちけん小町魅力向上委員会」の2代目・会長に榎本菜月氏(榎本建設)が就任した。同委員会は、栃木県青年経済連合会と同県の女性土木技術者で構成する組織。県内の女性技術者にとって職場環境を働きやすく改善すること。また、建設業の魅力を発信することを目的に発足し、業界イメージの向上のために活動する。

委員会では、情報発信や幼稚園での絵本の読み聞かせなどを実施。女性技術者が少ない現状を変えるため、近隣県の女性支部との意見交換なども積極的に手掛けている。今年は、栃木県建設業協会が毎年開催するイベント「建FES GO!」に、初めて女性部として重機の乗車体験ブースを出展。多くの小学生が列を成し、実物に触れながら体験を積むなど、これまでにない機会を提供した。榎本会長は、「現段階では、『女性ならではの視点』と現場で重宝されるケースも多い。しかし、将来的には『女性だから』という枠に囚われず、性別や世代関係なく認め合える職場環境を目指したい」と思いを語る。現在、自身に与えられた役割は、旧来からの業界イメージ払拭と、誰もが働きやすいと感じる環境作り。多様な視点や意見を受け入れ、新たなイノベーションを生み出せるか注目である。


榎本会長は現在、榎本建設(日光市)の土木工事部に所属する。家業ではあったが、両親は入社には肯定的でなかった。特に実父である社長は、「女性は建設現場に従事するなど持ってのほか」と猛反対。しかし、榎本会長は「建設業の壮大なスケール感や社会貢献性の高さにすっかり魅了されていた」と当初からの思いを述べる。行動で熱意を伝え続けたことで、何とか説得することに成功した。入社後も女性として苦労はあったが、現場経験を重ねるうちに「自然と周囲からの評価が変わっていった」と語る。2021年度には、「優良建設工事技術者表彰」を栃木県内の女性として初めて受賞。「ICT活用工事に初挑戦した現場だった。不安に押し潰されそうな時期もあったが、皆さまの支えにより完遂できた」と謙虚に話す姿も印象的である。


榎本会長は、「かつて建設業は『3K=きつい・汚い・危険』のイメージが根強かったが、近年はDXの推進や現場環境の改善が急速に進んでおり、合理的かつ生産的な職場も増えている」と現況を話す。工事現場のトイレは、個室にヒーター付きの洋式仕様となり、現場も整理整頓が徹底されるなど、世間一般が想像する状況から変わり続けている。女性の現場従事者も増えたことで、子育てと両立する社員も珍しくなくなりつつある現実を「もっと浸透させたい」と切実に訴える。「私の目標は、県内の建築・土木現場を生き生きとした環境に変革すること。委員会での活動が業界全体の改善に繋がるよう、今後も全力を尽くしていく」と決意を述べ、今後の躍進を誓った。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。