クラフトバンク総研

東松建設が利益率重視の事業展開へ 

更新日:2025/4/25

 東松建設(東京都江戸川区)の松澤和紀社長は、当面の目標を「管理技術者の年収を1000万、主任技術者で800万、作業員でも最低600万円を保証できる体制」に設定した。前職での予期せぬ倒産直後、周りの仲間から「また一緒に働きたいから、会社を作ってほしい」と盛り立てられ創業した同社。道路舗装工事から始めた工種は、河川や土木にも広がりを見せ、現在は江戸川区など官庁発注の工事を主体に事業展開している。

 明確な目標を定めた理由を松澤社長は、「原材料高騰など様々な部分で値上がりが続く中、社員が安心感を持って働くには利益率に着目し、経営者としてベクトルを示す必要があると感じたから」と力を込める。「利益率が良い=ランクの高い工事」と理解しつつも、公共工事が故に落札できない可能性もある。その現実を加味し、敢えてランクを下げた工事も担当するなど、数多くの実績を積み上げ続けたことが、現在の徹底した積算方法の習得に繋がっているという。「自社独自の手法を確立するポイントは、とにかく数を打つ中で本質を捉えること。この長く険しい道を避けないことが全ての始まりだ」と断言する姿からは、気の遠くなるようなトライ&エラーにより、ベストな手段を模索し続けた過程が推察できる。

 松澤社長は、「売り上げを軽視する訳ではないが、利益率を重視した結果、河川工事に力を入れるようになった」と近年の変化を語る。創業期から始めている舗装工事では、夜間勤務が主体で工期が長いことが大半。これに対し受注規模にもよるが、金額が大きく短期で終わるケースが多い河川工事に軸足を移すのは、「堅実な技術を培ってきた当社にとっては、自然な流れだったと感じている」と振り返る。取材中に「正確な技術と手順を踏めれば、建設業はローリスク・ハイリターン」というワードが何度か出てきたことからも、松澤社長の頭には常に様々な数値がインプットされており、物事が1つ動く度にリスク・コスト・メリットが算出されていることが見て取れる。

 2029年に創業30周年を迎える東松建設だが、「向こう20年を視野に入れると、後継者を育成・選定することも現実的な話になってきた」と現在の心境を話す。後継者を指名するまでの道のりは長いようで「ここは焦らず腰を据えながら取り掛かりたい」と本音を述べる行間には、並々ならぬ覚悟が感じ取れる。社員も地元出身者が多く、所属する江戸川建設業協会の会員と共に、積極的に地域の催しなどに参加する姿勢は、地場の活性化に繋がっていると評判が高い。東松建設の社是である「夢と未来へつづく道を作る会社」を、次世代に継承することはできるのか。松澤社長がどのような変遷を辿りながら、バトンを受け渡す人を選定していくか興味が尽きない。

新着記事

  • 2025.05.27

    ショールーム開設のハマニ。左官技術の伝承に全力を尽くす

    「とにかく職人の採用・育成の改革が急務だと感じた」。  左官・土木工事を手掛けるハマニ(静岡県浜松市)の河合滋社長は、慣習として続けてきた「見て学ぶ」「技術を盗んで覚える」という従来の職人文化に限界を感じ、体制の移行を決 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.05.23

    「誰かの笑顔のために」、三瓶工業がDX駆使で新たなステージへ

     ㈱三瓶工業(山形県天童市)は2022年、設立50周年を記念して会社のロゴや制服、ヘルメットなどのデザインを刷新した。アイデア作りからデザイン製作までを一括で依頼した先は東北芸術工科大学。地元の芸大生との連携により、これ […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.05.14

    事前防災の定着に最善を尽くす 目黒建設業防災連合会

     目黒建設業防災連合会は2021年5月に発足し、初代会長には加藤公章氏(加藤電気工事)が就任した。同連合会は、目黒区内の建設・電気・設備・造園の4団体から構成されており、加藤会長は「地元の建設業が何をすべきかを突き詰めた […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.05.09

    若手による地域活性化に挑戦 平畑建設

     平畑建設㈱(広島県三原市)の平畑隆也取締役が、広島県建設業協会連合会・青年部会の幹事長に就任した。今年3月28日に開催した設立総会では、「我々の世代で新たな価値や経営モデルを提示し、未来を創り出せるよう全力を尽くす」と […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦