都住建がDX促進に向けた活動に注力へ
更新日:2025/5/2
都住建は、都住宅供給公社住宅の建築・土木工事店として組成する協同組合。あらゆる建築・土木工事の新築や改修、修繕工事を、安く安全かつ良質に行う実績を持つ企業集団であり、約60社の組合企業が加盟している。
千田拓雄理事長は、「理事長に就任して10年近く経過したが、今が過渡期と感じている」と本音を話す。1番の理由は、「役所に紙で提出するための書類作成や、電話・FAXでの報告業務が多過ぎて、施工時間の確保が限界を迎えている組合員が増えているから。このまま何の対策も打たず現状を放置すると、更なる悲惨な状況に突入する可能性が高い。これを避けるためにも行政との綿密なコミュニケーションを取り、DX推進などを積極的に提言していく」と明確なスタンスを取る。何よりも優先して取り組むべき分野は、「クラウドを活用した写真や書類などのデータ整理。この部門は組合企業でも取り組めていないケースが多いので、理事長として組合内ではDX促進の啓蒙活動を継続し、行政には最適な提案を継続する」と意気込みを語る。

組会企業の主な業務は、退去後に実施する室内の修繕や空き家の補修工事など。都に準じた施設の仕事となるため、火事対策や水道関連の修理、家の鍵を紛失した際のケア、夜間の見回りや安否確認なども必要になる。このような管理をスピーディー・スムーズに進めるため、「DXを活用した各部署との連携が不可欠と痛感している」と強調する。特に千田理事長自身は、「現在は、基本的に紙ベースで進められている空き家の工事受発注を、DXに置き換えること」を想定しており、「このような活動を働き方改革にどのように繋ぎ合わせていくかが最大の課題」と捉えているようだ。これは、常に都住建の業務に社会的な使命感を抱き、都・組合員・居住者の全方位をフォローしてきた千田理事長だからこそ見極められる世界観であり、どのような過程を経てDX導入を実現していくか注目である。

発注者・居住者との協調関係を大事に、都民の『住』の安全・安心を守り続けることが市場命題の都住建だが、直近で意識すべきは「DXで効率化を実現し、少しでも早く働き方改革に適応すること」を挙げる。過去にも「優秀かつ柔軟な公務員が担当になったことで、途中まで理想に近い形でDXが進んだこともあった。しかし、役所特有の3年に1度ある人事異動により振り出しに戻ったことが何度もあった」と口惜しそうに振り返る。「過去にあった全てのデータをクラウド上にアップし、検索可能なシステムを構築すれば、容易に過去を振り返ることができ、誰が変わっても滞りない業務が進められるはずだ」と既に複数の代案を持ち合わせている。組合企業のDX化がスムーズに進むのかは、千田理事長の判断による部分が大きい。「今後も都住建は、東京都の全区・全市の建築・土木工事を担当できるエキスパートとして、創立の精神を忘れず、東京都住宅供給公社の実践部隊としての役割を全うしていきたい」と千田理事長は展望を述べる。「専門工事会社で働く人々が施工に集中できるようDX化を進め、働き方改革に対応するために全力を尽くす」。端的に本質を突く解決策であり、DX導入に二の足を踏む企業こそ参考にできる点が多いはずだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。