都中建の活動に注力。徳力建設工業が地域活性化で存在感を発揮
更新日:2025/5/2
徳力建設工業(東京都豊島区)の鳥越雅人社長が、地場に根差した中小建設業の立ち位置をボトムアップするため、東京都中小建設業協会(都中建)での活動に更なる力を入れていくことを決めた。「地元の街づくりに携わり、詳細を熟知する建設企業が地域と日常的に意思疎通を図らなければ、突発的に起こる災害に対応できるはずない」という理由が大きく、「大手企業では行き届かないきめ細かな配慮が、中小建設企業には可能なはずだ」という熱い気持ちが源泉にあるようだ。
鳥越社長は、2001年に徳力建設工業の4代目の代表取締役に就任。他社での勤務経験を活かし、「地域の安心で快適なまちづくり」をモットーに組織を運営してきた。創業者かつ祖父である鳥越卓次郎氏の「堅実に生き、建設業以外に手を広げない」という言葉を心に刻み、協力会社や関連団体との連携を深めることで、各企業と社員の待遇改善や職人高齢化などへの対策を推進。長年、所属してきた都中建で今回の決断に至った経緯には、「地場建設業の役割を明確にすることで、社員のモチベーションを向上し、業界全体を活性化に繋げていきたい」という思いもあるという。
特に近々に起こり得る首都直下型地震を想定すると、「おそらく山手線が止まり完全に東西が分断される。そのような状況下でのインフラ復旧は一朝一夕には行えず、各企業とのスムーズな連携が生命線になるはずだ」と見立てを語る。インフラは、電気・設備・土木・建築・水道など全ての分野が、滞りなく協調し合うことで成り立っているもの。緊急時のみ稼働できることなど有り得ない。1社だけで実現できる世界は限られており、「万が一」の事態に備えるには、常にサポートし合える体制の確保が必要と理解しているからこそ、鳥越社長は協会の防災訓練やパトロールなどを重視する。複数の地域に根差した企業同士が助け合えるネットワークこそ、都中建が長年蓄積してきた強みである。
「当社では今後、事業承継を進めると同時に、官民問わずメンテナンス部門に徹した工事に重きを置いていく。DXの導入や若手・女性が活躍できる環境の提供など、既に開始はしているが浸透の領域に達していない案件もまだ多い。次世代にバトンを引き渡すこの期間こそ、『私の集大成』と覚悟を決め、あらゆる手段を尽くしていきたい」と先を見据える。現在、30代である息子と甥の2人が社員として働いており、鳥越雅人代表取締役は「これから様々な障害が出てくるはずだが、私が経験したノウハウの全てを伝承するので、建設業界が抱える課題解決に立ち向かってほしい」と期待を込める。先代から引き継ぎ、鳥越社長が発展させてきた徳力建設工業の軌跡が、遠くない未来に継承されていく。先人の知見をどのような形で花開かせていくか注視すべきだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。