東秀興業が理想実現に向けた事業展開に挑戦
更新日:2025/4/15
「正直、独立が頭の中を巡ったのは、1度や2度ではなかった」。
東秀興業(茨城県ひたちなか市)に新卒で入社し、現在は社長を務める江幡良太氏の偽らざる本音である。専門学校で学んだ設計の知識を活かし、設計事務所に入ることを試みるも、就職氷河期の影響を受け頓挫。「建設業に携われるなら」と入った同社にて、23歳の若さで役員に昇り詰め、「足場を組めて図面を書ければ、材料など無駄を削減できる」と新たな取り組みにも着手した経歴を持つ。

人望と実績、双方を持ち合わせながらも起業を選択しなかった理由を、「『自分が不在では会社が傾く』という考えが強かったから」と微笑みを交えながら答える。リーマンショック・コロナ以降は周囲の企業が倒産し、自社の存続が危ぶまれたこともあった。その度に、創業者であり現会長の青木進氏との二人三脚で、何とか乗り越え続けた日々を思うと、簡単に「独立します」と宣言することは「仁義に反する」との気持ちが強かったようだ。


東秀興業は2018年、全国仮設安全事業協同組合(ACCESS)に加入した。茨城県内では順調な実績を積み重ねていた自覚はあったが、「入会直後に自分が井の中の蛙だったと痛感した。青年部に所属する同世代には、20年先を見据えて活動する会員も居て、会社を経営するに当たって大きな刺激を受けた」と振り返る。現在は幹事を務めるなど、組合を代表して国土交通省との意見交換などにも積極的に参加。ACCESSをきっかけに、「専門工事のあり方や処遇改善など、全体を見通す力を養うことができた」と語る通り、俯瞰した視点を意識した組織運営もできるようになったという。

2年前には入札資格を取得し、県内の7市町村で元請けとして事業展開する準備も整備した。社内では育成・採用にも力を入れており、「技能だけでなく、人間的な器量も向上するような施策を打ちたい」と理想の会社像に向けた構想を語る。「建設業は、何も無い場所にゼロから様々な工程を経て、1つの物を作り上げることができる魅力的な仕事。引き続き、当社の長所である機動力・提案力・技術力を発揮することで、新たなイノベーションを創出し、お客さまに安全・安心を届けられるよう全力を尽くしたい」と意気込みを述べる。会社の目標は「建設業界イメージを刷新し、誇りある仕事を実現すること」。常に足元を大切にし、安心・安全な施工を届け続けてきた東秀興業。掲げたビジョンを具現化していく日々は、遠い未来ではないはずだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。