福山電業が地域に新たな価値を生み出す
更新日:2025/11/13
福山電業(広島県福山市)は、来年7月に設立80周年を迎える。現在、4代目の社長を務める島田宗輔氏は、慶応義塾大学で政治学を修得した後、「0→1を創造する」魅力に惹かれ広告代理店に就職した。様々な企業と関わりを持つことで、社会の意義・奥深さを体感する中、2011年3月に東日本大震災が発生。再生可能エネルギー需要の重要性にいち早く気付けたことで、培った営業力を生かすべく家業に戻り、太陽光事業部を立ち上げるなどを新たな取り組みを経て、33歳で社長に就任した。


島田社長が責務として掲げてきたのは、「社内体質の刷新を通じた主体的な行動の促進」。受動的な社員の存在は、組織の硬直を招き将来的には事業に支障をきたす。トップダウンの構造を改め、権限を部下に委譲することで、主体的な幹部の育成を目指した。会議では、これまでの重責を担ってきた前社長が敢えて参加しない機会を設け、現場の意見を直接吸い上げて共有できる環境も整備。「多大な労力をかけたが、意識改革に費やした時間は、現在の強固な信頼関係や良好な人間関係に直結しており、代えがたい資産となっている」と手応えを口にする。


他社と一線を画すまちづくり事業にも重点を置いており、2020年には自治体職員を招き入れたエリアマネジメント事業室を創設。中四国地方では初めてとなる、Park-PFI事業で手掛けたガーデンレストラン「Enlee」を、女性や子供連れで賑わう場に。また、JR福山駅南西に位置する元百貨店1階をリノベーションした「iti SETOUHI」は、年間440件のイベントが開催されるなど、人の往来を生み出し、福山市中心部において新たな価値の創出に成功した。島田社長は、「地方だからできるビジネスを模索する」という意思を明示しており、新たな事業領域に参画した理由を「地域経済の循環を担保したかったから」と即答。「地域で抱く課題を、その土地に住む私たちで解決したい」というシンプルかつ力強い動機を原動力に、常日頃からのトライ&エラーを試みている。


「1946年に創業した当社は地名を冠している通り、創業当時からのまちづくりのマインドを堅持している」と語る島田社長。「会社を永続するためにも、地域の信頼と共感を積み重ねながら、社員一同で自社のビジネスと高度に融合させていく」と展望を新たにする。時代と共に最適解を追求しながら独自の存在感を発揮する福山電業。福山の街により一層の明るい兆しをもたらすことに期待したい。
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。








